「うつ病で休職」回復に効果的な"心の休ませ方" 働けないことへの劣等感や罪悪感を遠ざける
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 20時0分
いまでは、心の病の経験が部下や同僚への思いやりを深め、みんなの信頼を得ているといいます。
完璧症で心配事に囚われるとなかなか脱出できなかったAさんですが、ネガティブなものの考え方をポジティブに変えることができるようになったのです。
Aさんのいまの座右の銘は、「人生は遊ばなくては損」。
また、スマホには「オーバーワークにならない。疲労回復をしっかりする。完璧主義にならない。相手の良いところを見る。嫌なら放置や遠ざけていい。家族を大切にする」というメモがあり、ときどき確認しているといいます。
そのメモは私がAさんに話した言葉です。
うつ病は、不条理な社会を懸命に生きてきた「証」
うつ病を発症したとしても、Aさんのように仕事に復帰される方はたくさんいます。
ただし、症状が完全に出なくなるまでにはしばらくかかるため、Aさんのように、ときどき軽いうつ状態になるのは珍しいことではありません。ある意味、ストレスのある社会に戻ったということです。
軽いうつとは、元気がなくなったり、疲れやすくなったり、朝起きづらくなったりなど、うつ病の部分的な症状が出る状態です。周りから「ちょっと元気ないね」と言われることもありますが、早い段階で心と体を休ませると回復します。
有名な心理学者の中には、「他人を思いやるようになればうつ病は2週間で治る」「うつ病は心の風邪」と断言されている方もいるようですが、臨床の現場では長期にわたって治療を行うのが基本です。
うつ病を敵対視するのではなく、焦らずにうまくうつ病の症状と付き合っていくのが良いと思います。専門家の中には、うつ病を「病魔」とか、「敵」と想定して、退治することを目標にしている人もいます。人とうつ病を敵対的な構造にしていますが、私は、うつ病は敵対視しないことが大切だと考えています。
そもそも、うつ病は人としてまっとうな人生を送ってきた中で発症したものであり、不条理な人間社会を懸命に生きてきた結果であり、否定すべきものではありません。うつ病は生きてきた証なのです。
広岡 清伸:精神科医
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