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日産、「旧ケイレツ」を救済せざるをえない事情 経営危機の河西工業に60億円出資の舞台裏

東洋経済オンライン / 2024年6月24日 9時30分

ただ、マレリと河西工業では企業規模が異なる。当時の負債総額が1兆円を超えていたマレリに対して、2023年12月末時点の河西工業の負債総額は1230億円。今回の増資引き受け額も60億円と大きくはない。

「万が一、法的整理になると日産自身が困るという判断も働いたのではないか」(同幹部)。日産向けの内装ドア部材のシェアのうち、河西工業は8~9割を占めるとみられ、日産にとって河西工業の経営破綻はサプライチェーン上の重大なリスクに直結するからだ。

従来のサプライヤー政策は限界

日産のサプライヤー政策が限界を迎えつつあることが河西工業への支援につながった可能性もある。

3月に日産が発表した新中期経営計画「The Arc」では100万台の増販をぶち上げた。だが、近年の台数減でサプライヤーは疲弊しており、日産の計画に対して懐疑的な声も上がる。

4月の記者会見で日産の内田誠社長は「The Arcの策定を進めていく中で、当初見込んでいた生産台数の実現が難しいモデルがあることがわかった。台数の話はわれわれの責任になるのでサプライヤーの負担を軽減する」と発言している。

日産側は否定するが、今年3月に公正取引委員会から日産へ下請法違反の勧告が出された「下請けいじめ問題」も影響したのかもしれない。社会からの視線が厳しくなる中、サプライヤーを見捨てるわけにもいかない、というわけだ。

インフレ対応も含むサプライヤー支援として、2023年度に600億円の支援を実施しており、2024年度にも1000億円規模の支援を行うことを公表している。河西工業への支援は2024年度に含まれる。

河西工業にとって、日産の支援は干天の慈雨となる。反面、日産の支配力が急激に強まるのは間違いない。

今回の投資契約の中で、日産は河西工業の2名の取締役候補を指名する権利(10%以上の議決権を保有する場合)を持つ。株主総会の承認を経た後、9月には日産出身の古川幸二氏(現ジヤトコ専務)が河西工業の社長に就任する予定だ。

日産には、さらに出資比率を引き上げるオプション(選択肢)もある。出資から1年後、優先株を普通株へ転換することが可能な取得請求権が付与されており、これを行使すると日産の出資比率は75%まで上昇する。

日産色が強まるデメリットも

だが、河西工業にとって日産の支配力が強まるのはマイナス面もある。

直近の河西工業の売上高に占めるメーカー別販売割合は、日産が約53%、ホンダが約19%、SUBARUを含むトヨタ系が約16%。近年はトヨタ自動車の基幹車種「アルファード」にドアトリムが採用されるなど、非日産向けの売上比率が徐々に拡大してきた。日産の子会社となれば、こうした非日産向け取引拡大に逆風となりかねない。

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