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釧路湿原の大量メガソーラーに土地買取で対抗 原野商法で取得した土地「手放したい」人々も

東洋経済オンライン / 2024年6月24日 12時30分

南部湿原一帯には、環境省のレッドリストで絶滅危惧種のキタサンショウウオ、タンチョウ、猛禽類のチュウヒの生息が確認されている。キタサンショウウオは釧路市指定、タンチョウは国指定の天然記念物。チュウヒは激減しており、全国で「135つがい」(日本野鳥の会による推定繁殖つがい数)しかいない。

トラストサルン釧路はここで2023年9月、あわせて約13ヘクタールの2カ所の土地を購入した。「私たちNPOの活動を知った所有者の方が連絡をくださり、活動を理解して土地の取得交渉に応じてくださった。土地の取得後にわかったのですが、取得した土地はメガソーラーの建設予定地の一部だったようです」と黒澤信道理事長(67歳)は明かした。

この土地取得は、毎日新聞が2023年11月30日付で大きく報じた。記事によると、元の地権者は発電事業地として買い取りたいという話を持ち掛けられ、間に入った不動産業者と売買交渉を一任する書類を交わしたものの、期限を過ぎても進展がなかったことから、同NPOに連絡したという。

このケース以外にも、地権者からの連絡が増えている。黒澤理事長は「昨年1年間だけで、10件ありました。うち4件は買い取り、6件は寄贈を受けました。ほとんどが、原野商法が盛んなころに買った土地についての相談でした」と話す。

原野商法とは、1970年代後半~80年代に盛んだった「将来、高値で売れる」とのセールス文句で山林や原野を売り込む不動産ビジネスの方法。詐欺罪に問われたり、宅建業法の免許取り消しなどの行政処分を受けたりした事例も多かった。

黒澤理事長が「宅地ではなく原野なのに図面だけを見せて売ったのだろうか。あるいは、将来このような宅地になる、と説明して売ったのか」と首を傾げる例もある。トラストサルン釧路が2012年に取得した南部湿原の20ヘクタールの土地の近くには、インターネット上で入手できる地番図で見ると、道路用地のように見える線に沿って100坪(330㎡)程度の区画が区切られ、宅地のように見える場所がある。実際には道路も区画もなく、ただ湿原が続いているのだという。

自らの金で買い取りを行うキタサンショウウオの研究者

釧路市指定の天然記念物、キタサンショウウオは、体長が約11センチと小さく、湿原の中のごく狭い範囲で一生を過ごす。4年前、環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。

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