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JR西の新型やくも、旧型「暗くて狭い」をどう克服? 目指したのは「我が家のようにくつろげる車内」

東洋経済オンライン / 2024年6月24日 7時30分

伯備線の岡山県側は高梁川を遡上する道行きで新見までの間に本流を11回も渡る。沿線は吉備高原とも称される (木野山ー備中川面)(写真:山下大祐)

鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2024年8月号「新型やくもの快適な旅路」を再構成した記事を掲載します。

伯備線特急42年ぶりの新型車両

2024年春、JRグループを通じてダイヤ改正が行われた3月16日からずれること20日、4月6日に岡山と山陰を結ぶ伯備線特急「やくも」に新型車両273系がデビューした。山陽新幹線岡山開業から10年を経た1982年7月に陰陽連絡強化のため伯備線と山陰本線伯耆大山―知井宮(現西出雲)間が電化開業、そのときに中央西線「しなの」、紀勢本線「くろしお」に続いて初代振子電車381系が投入されたが、以来42年ぶりの「やくも」への新車投入である。

【写真】新型やくもの雲の形の折り畳みテーブルは駅弁などを広げて今は忘れかけた列車の旅ができる

そのフォルムは、近年のJR西日本の一連の特急電車に共通しているが、「山陰の風景から生まれ、伝統に響き、溶け込む」というキャッチフレーズの“やくもブロンズ”に身を包み、古来、出雲の国の枕詞「八雲立つ」にちなむ「八雲」をシンボルとして要所要所に配している。その印象は従来の灰白色の特急電車と一線を画し、そしてまた国鉄型381系電車に対する新しさも存分に感じさせる。絶え間なく急曲線が続く中国山地横断の路線を克服する振子も最新技術にグレードアップした。

40年間活躍してきた381系に代わる車両をどのような姿にすべきか。その答をJR西日本、近畿車輌とともに探っていったのは、建築デザイナー川西康之氏((株)イチバンセン代表)である。氏とは米子駅で面会した。

振り返るに、「やくも」はある意味、微妙な存在だったと思える。新幹線接続の山陰方面特急として主役たる立ち位置だが、JR西日本の中で北陸特急のような圧倒的存在ではない。そのため381系は、何度もリニューアルが手掛けられているが、根本的な新車への投資は見送られていた。同じ381系使用路線だった紀勢線はより厳しい線形なので速達効果が薄く、結果、振子をあきらめて新車を導入したが、伯備線はそうはいかない。

また、非電化区間に跨るローカル特急は地元の危機感も高かったため、2000年に前後して島根、鳥取両県が補助を行い線路改良と高速車両の導入を実現したが、「やくも」はある程度需要が高いので補助の話はない。その目で見ると伯備線は主要路線であるのに一線スルーなど近年の高速化メニューも未実施で、列車は駅の分岐器を通過するたびに速度を時速50km程度に落とす。

「やくも」の欠点と伸び代を組織横断で洗い出し

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