インバウンド増えても大変「外食業界」苦悩の訳 コロナ禍前から圧倒的に変わったことは何か
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 8時30分
これに伴って人件費も高騰。加えて、原材料費の価格も高騰しており、飲食店の経営を圧迫している。小麦粉や食用油など、日常的に使用するものも多く含まれているため、これまでと同じやり方では利益が残らなくなっているのだ。
飲食店は利益率が10%もあれば優秀で、どんなにがんばっても5%がやっとだという飲食店も多い。その数字を達成するにも、「FLR」という3つのコストをコントロールする必要がある。
FはFood(原材料費)、LはLabor(人件費)、RはRent(家賃)を指していて、一般的な飲食店の場合、FLRコスト比率は70%だ。そのうちFとLが高騰しているため、Rでコントロールしないといけないが、コロナ禍以降、家賃の高騰も続く。そのほかにも、光熱費が値上がりしていたり、クレジットカードの手数料が占める割合が増えたりと、利益を圧迫する事象が山積している。
こうした中、多くの飲食店が値上げを実施しているが、十分に行えているわけではない。社会保険料などの公的負担が上がり、可処分所得が伸びていない中で値上げをしても客離れを起こすリスクがある。また、日本では大手ファストフードチェーンが値上げを行ったときに顧客から反発があるなど、安売りに対する支持も大きい。
これまでと同じやり方では、多くの飲食店が生き残っていけない。そこで外食業界で培ったノウハウを生かして、別の業界へ挑戦する流れも生まれている。最たる例が、食品の製造・販売だ。
本業以外を伸ばしている「大阪王将」
この分野で、いち早く大きな成功を収めているのが「大阪王将」が販売している冷凍餃子ではないだろうか。大阪王将を展開するイートアンドホールディングスの2024年2月期決算では、外食事業の売り上げが144億8800万円なのに対して、食品事業の売り上げは214億3300万円に及び、本業を上回っている。
同社はコロナ禍でも食品事業が経営基盤をしっかりと支えていたため、飲食店のテクノロジー化など、積極的な投資を続けることができた。こうした動きは今後、さらに加速していくのは間違いない。特に外食産業とは別の収益構造のビジネスに挑戦をし、事業のポートフォリオを豊かにしながら、経営の安定化を目指す流れになるのではないか。
今後、どんなにインバウンドが活況を呈しても、残念ながら「29兆円の壁」を超えるのは難しいだろう。その理由の1つが、外食機会の減少だ。コロナ禍以降、特に居酒屋をはじめとしたアルコール業態では2回転目、3回転目の需要が激減している。
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