「無法地帯の都知事選」"悪用する者"多発の必然 今回の選挙で"制度の穴"が浮き彫りになった
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 9時0分
これを「広告・宣伝費」として捉えるとどうだろうか。
掲示板にポスターを貼れるのみならず、政見放送で1人5分30秒(紹介も含めると6分)の枠が与えられる。しかも、放映回数は2回ある。
テレビ放送やテレビCM、屋外広告には厳しい法規制、自主規制があり、自由な表現を行うことはできない。一方で、選挙ポスターは公職選挙法では内容を直接制限する規定はなく、事前チェックもないという。政見放送についても、無料で、そのまま放送することが義務付けられられている。
言ってみれば、やりたい放題のことができてしまうのが、選挙ポスターであり、政見放送であるということになる。
政見放送に関しては、2023年4月20日の午前6時から約9分間にわたり、「ジャニー喜多川氏の性加害問題」についてNHK総合テレビで放送されるという“事件”が起きた。これは衆議院千葉5区補欠選挙において、政治家女子48党(現NHK党)が政権放送の枠を使って、ニュース番組風の映像を流したものだ。
この時点では、ジャニー喜多川氏の性加害について、BBCがドキュメンタリーを放映し、カウアンオカモト氏が記者会見も行っていたが、テレビ局はほとんど取り上げていなかった。この事件をあえて放送して、世の中の関心を喚起したことは、いまから振り返ると、英断であったと言えるかもしれない。
一方で、政見放送枠が選挙以外の目的に利用されたり、偏向した主張を拡散したりする恐れがあることも明らかになったと言えるだろう。
このような勝手な行いができてしまうのは、日本社会で言論と表現の自由が尊重されているからで、これを制限してしまうと、言論統制、弾圧との批判を受けかねないためだ。
「広告・宣伝の場」として見た選挙の価値は?
都知事選への立候補を「テレビ放送とポスター掲示板が自由に使える広告契約」と見なせば、「超高コスパの契約」と見ることができる。
NHK党によると、今回の都知事選では、一定額を同党に寄付すれば、ポスター掲示板の1カ所で最大24枚のポスターを貼れる権利が寄付者に与えられるという(告示された6月20日以降は、ポスター1枠当たり2万5000円)。
6月21日に行われたNHK党・立花孝志党首の記者会見によると、その時点での寄付金の総額は1000万円に満たず、候補者24人分の供託金7200万円にはまったく届いてはいない。
しかし、もし都内1万4000カ所すべてのポスター枠が“売却”できれば、売上総額は単純計算で3億5000万円となる。それだけで候補者の供託金を賄えてしまうどころか、大幅な黒字になる。
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