「無法地帯の都知事選」"悪用する者"多発の必然 今回の選挙で"制度の穴"が浮き彫りになった
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 9時0分
それに加えて、メディアやSNSで取り上げられることも含めた「露出効果」もある。選挙以外のところで同じことやっても「変なことをやっている人がいる」くらいにしか思われなくても、選挙運動として行えば大きな注目を集めることができる。
実際、NHK党の寄付枠を活用して、キックボクサーのぱんちゃん璃奈氏が大規模なポスタージャックをしたほか、出会い系サイトのような広告や風俗店のポスターが掲出された。
ただし、まともな感覚を持っている人であれば、批判を浴びることによる“逆効果”も想定してこうした行為は控えるはずだ。
かくして、“まともではない”人たちが群がってくるという結果になってしまっている。
選挙活動“悪用”の弊害
現在の公職選挙法の枠内では、このたび起きた諸問題を禁じることは難しいという。たとえば、供託金を値上げするという方法も考えられるが、そうすると「お金がない人は立候補できない」という弊害を招いてしまう。
しかしながら、この状況が繰り返されることは、下記のようなさまざまな弊害をもたらす。
1:選挙活動の濫用
2:税金の不適切な活用
3:選挙や政治に対する不信の拡大
選挙には多額の税金が投入される。にもかかわらず、選挙で当選することを目的としない私的な活動や、偏向した思考を広げるために選挙活動を利用するのは、どこから見ても不当な行為である。
それだけにとどまらず、泡沫候補が乱立して選挙活動からずれた行動を行ったり、関係のない第三者が宣伝活動を行ったりすると、選挙に対する信頼性が揺らぎ、有権者の関心も削いでしまうことになりかねない。それは、長期的には政治への不信へと繋がっていくだろう。
現代の日本の政治で独裁者の圧政、権力の乱用よりも懸念されるのが、良識のない人たちの自由や権利の乱用であるように思える
これまで、法律で縛らずとも、大幅に道を外れた行動を取る人はあまり多くはなかったが、一度このような事態が起きてしまった以上、同じことが再発することは十分予想できる。
次に起こるのは、政見放送の悪用ではないかと思う。少なくとも、選挙運動を選挙以外のことに利用することは、早急に規制する必要があるだろう。
本日から放送される政見放送も注視したい。
西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
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