中国BYD「シール」正統派EVスポーツセダンの真価 奇抜さより真面目さが際立つ第3弾モデル登場
東洋経済オンライン / 2024年6月25日 14時0分
走行パフォーマンスこそシール最大の強みだ。BEVだから速い、もはやこれは当たり前。ツインモーター仕様の0→100㎞/h加速3.8秒(シングルモーター仕様は5.9秒)と立派だ。シールではそうした数値で図られる性能はもとより、独特の走行感覚がしっかり造り込まれている。
それは市街地をゆっくり走らせているだけでも感じられ、カーブの連続する山道になると一層、強い個性として認識できた。具体的には、40~50㎞/h程度で走らせている際の振動の収束がものすごく早く、鉛直方向の振幅などは瞬間的に収まる。これは初めての感覚だ。
カーブでは少ないロールこそ感じるが、車体はステアリングをきった方向へとすぐに向き替えを開始する。これにはダブル(デュアル)ピニオンギヤ式の電動パワーステアリング効果が含まれるものの、終始スッと動き、サラリとした身のこなしは気持ちが良い。ちなみに装着タイヤは静粛性能を重視した「コンチネンタルEcoContact6 Q」で、サイズは235/45 R19、直径は694.6mmだ。
ツインモーター仕様は、メカニカル式の油圧可変ダンパーシステムを搭載する。いわゆるダンパー内部のオリフィスを動かして減衰力を連続的に調整する機構だ。昔から、どの自動車メーカーでも使われている方式ながら、シールでは車体剛性が高いこと、サスペンションの取り付け剛性が高いことなどが加わり、足もとがいつでもスッと動く。しかも、動くだけじゃなくてしっかり止まる。
こうした味のある走行性能はクルマの基本構造変革から得られた。ATTO 3やドルフィンでは「CTP」(Cell To Pack)と呼ぶ「ブレードセル+バッテリーパック+車体」の構造様式を採用してきたが、シールではこれを「CTB」(Cell To Body)に変更。「ブレードセル+車体」に改め、同時にバッテリートップカバーをボディフロア一体型にした。
さらに、「ねじり剛性」(ボディの強さ指標のひとつ)を40000 Nm/degと最新のスポーツモデル並に高めたボディを新規に開発。ここにCTBを組み合わせ、さらに前出の油圧可変ダンパーシステムをドッキングすることで、シール特有の世界観を走行性能の上から演出したのだ。
シングルモーター仕様の走りは?
続いて試乗したシングルモーター仕様も、ツインモーター仕様と同じボディ構造でCTBを採用するが油圧可変ダンパーシステムではなく、減衰力固定式の油圧ダンパーになる。そのため、スカイフック的なツインモーターの走り味はないが、それでもスッと動き、さらりとした身のこなしは感じられる。
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