1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「怠けられる」人が勤勉な人より成功する納得理由 「怠惰」のおかげで誕生したミュージカルもある

東洋経済オンライン / 2024年6月26日 17時0分

オーガストは、週次の業務管理、目標管理に使うスプレッドシートを見せてくれた。そこには仕事以外の項目もある。恋人との時間、瞑想、散歩、家族に電話する時間を作る、という欄もあった。オーガストの人生にとって大切なものはすべて、そのスプレッドシートにまとまっていた。

スプレッドシートの右側には、その週の達成状況を書く欄がある。会議に出たか、予定通り友達と電話できたかなどだ。さらに、それぞれの目標達成状況について、自分の感情を書き込む欄もある。

このスプレッドシートを見れば、いつも飛ばしてしまう目標が何かわかるし、できなくてどう感じたかも一目瞭然だ。

目標を達成できなかった自分を責めるのではなく、やる気のなさや怠惰によってどうなったのかを観察し、怠惰から教訓を得ることが重要だ。

たとえば、家事の目標を達成できないことが多いけれど、自分がそれを気にしていないなら、家をピカピカにすることは自分にとってさほど重要ではないとわかる。

それなら、本当に価値を感じる新しい目標を設定すればいい。目標のすべてを達成できなくても落胆する必要はないのだ。

「この作業で、他の人のことばかりでなく、自分について考えて、自分の経験や感情を意識できるようになった」とオーガストは言う。

「このシートを使って自分に『どんな感じ? 本当は何がしたい? 楽しくやれてる?』って聞いてみるわけ。もし楽しめていないなら、その目標に向けて頑張る意味がないのかも」

世の中は「怠惰のウソ」が規範になっているため、決めた目標を達成できずに見切りをつけるのをつらく感じるかもしれない。

それでも、自分自身の行動や感情をしっかり観察し、自分を責めずにそこから学ぶようにすれば、より自分らしい生活を送り、人生を満喫できるはずだ。

怠惰のおかげでミュージカルが誕生

ミュージカル『ハミルトン』の脚本・作詞作曲・主演で大スターになったリン=マニュエル・ミランダは、妻との休暇中に歴史書を読んでいて、作品のコンセプトを思いついたということはよく知られている。

新しいミュージカルのアイデアが湧くのを期待して休暇を取ったわけではない。自作のミュージカル『イン・ザ・ハイツ』を7年のロングランで上演してきた彼は、ただリラックスしたかっただけだ。

ところが、すっかり充電できた途端に、その後の人生を変えるクリエイティブな大転換が起こった。

『ハミルトン』が前例のないほどの大成功を収めたのを受けて、ミランダはまた、休暇を取ると決めた。舞台のファンはミランダ降板のニュースに驚愕したけれど、ミランダ自身はインタビューで、何もせず怠惰になることが大切なのだと強調している。

「これまでの人生で最高の、おそらく生涯ベストのアイデアが湧いたのは休暇中だった。これは偶然じゃない」と、2018年のインタビューでミランダは語っている。

「僕の脳がちょっと休んだ瞬間、『ハミルトン』のアイデアがやってきたんだ」

何もせず怠惰に過ごすことで、私たちは優れたクリエイターや問題解決の達人になれる可能性さえあるのだ。

それどころか、怠惰にはさらに重要な効能がある。

日常生活にあえてゆっくりとリラックスする時間を作って、「何もしない」ことによって、心の傷の回復が始まる。そして、心身の疲弊が癒やされ、滋味深い豊かな人生を生きられるようになるのだ。

デヴォン・プライス:社会心理学者・作家

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください