発売から1年「インプレッサ」の販売が低調なワケ 兄弟車「クロストレック」もいいクルマだが…
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 10時0分
しかし、結果が今ひとつというのも事実。その理由は何だろうか。
技術的フラッグシップ「レヴォーグ」の存在
個人的に思うのは、先代となる5代目モデルの登場が、“あまりに鮮烈すぎた”ということだ。しかも、先述のように、このモデルはよく売れた。
ちなみに、先々代となる4代目は、2011年にデビューして、翌2012年の販売は5万2017台だった。現行の3万4379台よりは多いけれど、7万台を超えた先代にはかなわない。
なぜ、先代モデルは売れたのか。その理由は、内容にある。先代のインプレッサは、SGPをはじめ“スバル初”をうたう新技術を数多く採用していた。
初めて先代モデルに試乗したときは、その進化の大きさに驚かされ、“スバルでもっとも進んだクルマ”だと強く感じたものだ。そうした驚きが輝きとなって、ヒットにつながったのではないだろうかと考える。
ところが、現在のインプレッサは、そうした驚きをもたらす存在ではなくなった。その役を担うのは、スバルが”技術的フラッグシップ”と呼ぶ、レヴォーグだ。
今のスバルは、多くの新技術をレヴォーグでお披露目するようになった。そのためインプレッサとクロストレックに採用される技術は、レヴォーグで既知となったものが多くなる。
新世代アイサイトをはじめBOLDERデザイン、縦型ディスプレイ、フルインナーフレーム構造のボディといったものは、すべてレヴォーグが初採用であった。インプレッサとクロストレックが初採用した新技術は、ステレオカメラに単眼を追加したアイサイトの3眼化くらいだろう。
話題性に乏しくインパクトに欠けるため、ユーザーに強くアピールできなかったのではないか。車格やサイズの面でも、フォレスターとアウトバックとの間にレヴォーグが生まれたことは、インプレッサの販売に影響を与えたであろう。
また、現在の自動車業界のトレンドは電動化だ。スバルの場合、独自のハイブリッド「e-BOXER」も用意するが、モーター出力が小さいこともあり、電動感が小さく、なによりも燃費性能が格段に優れるわけではない。強力な低燃費型ハイブリッドの不在も不利になったはずだ。
あっと驚くテコ入れはあるか?
5月28日にトヨタ/マツダ/スバルの3社が合同で開催した「マルチパスウェイワークショップ」では、トヨタのシステムを応用した新型ハイブリッドシステムの存在を発表したから、次世代モデルではインパクトのあるハイブリッド仕様が登場するかもしれない。
いずれにしても、何かしらかの大きなテコ入れがない限り、インプレッサとクロストレックの大幅な販売増は難しいだろう。乗ってみればデキはいいだけに少々残念ではあるが人々を、あっと驚かせるテコ入れを期待したい。
【写真】インプレッサ/クロストレックの内外装(35枚)
鈴木 ケンイチ:モータージャーナリスト
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