「海水温上昇」で日本の周りだけ魚が獲れないなぜ 世界では水産業が成長産業になっている現実
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 11時30分
農林水産省から2023年の水産物の生産量(漁業+養殖)が発表されました。数量は372万トンと、現在の形で統計を取り始めた1956年以降で過去最低を更新しました。過去最低は毎年のこととなっており悪化が止まる気配はありません。
前年(2022年)も過去最低でしたが、それに比べて4.9%減、数量にして19万トン減という膨大な数字です。さらに漁業は前年比4.3%減(13万トン減)にとどまらず、養殖も前年比6.9%減(6万トン減)とかなり深刻です。
FAO(国連食糧農業機関)の数字からは、1970年代から1980年代にかけて20年弱世界一の水産物生産量を誇っていた日本のかつての面影はありません。2021年に世界第11位となりトップ10から陥落し、2022年には同12位とさらに順位を落とし続けています。また、順位が落ちていくのは他国の生産量が増えているというより、日本の生産量が減り続けているためなのです。
サンマをはじめ、さまざまな魚が獲れなくなっているため、あまり食用になっていなかった小さな魚まで店に並び、しかも価格が高くなるといったことが増えています。この傾向は、水産資源が減ることで供給量が減り、今後も強まります。
どんな魚が減っているのか?
ところで具体的にはどのような魚が減少しているのでしょうか? 次の表は最新(2023年)の水産白書からのデータです。
2022年の数字は2012年と比較すると16種(その他の魚種は1魚種として)のうち、実にイワシを除いたすべての魚種が減少して「全滅」状態なのです。なお、ホタテは漁業といっても稚貝をまいている漁業なので除外します。
さらに2022年と2021年の比較でも、ほぼ全魚種が減っていることが表からわかります。これに2023年を比較したら、そのまたさらに減少しているのは、2022年より全体として減っているので、言うまでもありません。なお、マイワシは環境要因で大きく変動します。今後起こり得るマイワシの資源減少が始まったら、一体どうなってしまうのでしょうか?
ところが、こういった生産量が減り続けている全体の問題が、マスコミで扱われることはほとんどありません。サンマが、サケが、スルメイカが、サバが、イカナゴが……といった個別の報道では全体像がわかりません。
また、すでに大きく水揚げ量が減っている前年より少しでも増えると、前年比何割増、何倍といった報道になるので、時にはまるで回復したような錯覚を覚えさせられてしまいます。
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