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「先延ばし癖のある部下」がみるみる変わる手法 人の癖を理解して、行動変容を促すナッジ

東洋経済オンライン / 2024年6月26日 15時0分

部下やチームがリスクを軽視しているとき、どんなアドバイスが必要だろうか? ダニエル・カーネマンは楽観的主義を抑える手段として「死亡前死因分析」が効果的だと『ファスト&スロー(下)』で示している。

では、カーネマン式の取り入れ方を説明しよう。プロジェクトが公表される前にメンバーを集めて欲しい。そして「1年後、このプロジェクトはローンチするが大失敗に終わる。さて、何が要因で失敗するのか? その経過をイメージしてまとめよう」と、メンバーに伝えて話し合うのだ。

メンバーから「為替や環境が激変してプロジェクトが成立しなくなった」「土地が買収できなかった」といった要因が上がったとしよう。この失敗のすべてについて回避策や発生時の影響を軽減するプランを全員で考え、プロジェクトの計画に盛り込むのだ。

行動特性Incentives:損をしたくない心

人々に努力を促すインセンティブはお金とは限らない。人は損失を強く回避しようとする行動特性を持つ。カーネマンとトベルスキーが提唱したプロスペクト理論は、状況に応じて人が確率を歪んで認識することを導きだしたものだ。この理論には3つの認知的特徴があり、その1つに損失回避性が含まれる。

投資家は往々にして収益が出ている時、利益確定に動く。一方、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとして大きな投資判断を行う。これは損失回避性が働いているためだ。

では、この特性を考慮して健康診断で社員の生活習慣病を防ぐためには、どちらの表現が効果的だろうか?

A:1日の食事を2000キロカロリーにすれば、あなたは生活習慣病になる可能性が低くなり、健康状態は良くなります【利得フレーム】

B:1日の食事を2000キロカロリーにしなければ、あなたは生活習慣病になる可能性が高くなり、健康状態は悪くなります【損失フレーム】

答えはB。損失フレーム表現は行動変容に効果的であり、さまざまな研究や自治体の活動で報告されている。脳科学を使った実験では、損をすると脳は痛みを感じる部位が反応する。つまり、損失は痛い感覚と同じなのだ。

超過勤務の削減と離職率低減につながったナッジ

行動特性Norms:人は組織の輪を乱すのを嫌う

人は集団から非難されたくない欲求をもっている。そのため多数派の意見に従ったり、自分の行動が他の人と違うと居心地の悪さを感じたりするのだ。これは不平等回避性と呼ばれ、自分と他者の利得に格差があることを嫌う特性を持つ。

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