新NISAで人気の「NTT株」が5月から急落した深層 個人株主は急増も、海外投資家と思惑のズレ?
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 8時10分
それだけに、株価の突然の落ち込みに動揺した個人投資家も多かったようだ。総会の質疑では、株主の男性が「株価が下落してどうしたらいいか、株主は困っていると思う」と訴える場面も。この男性が株主に対する携帯料金半額といった還元策を提案すると、会場からは拍手が湧き起こった。
株価急落を招いた減益予想の中身
株価下落の主因とされる、5月10日に発表された2024年度の通期業績予想は、営業収益が13兆4600億円(前期比0.6%増)、営業利益が1兆8100億円(同5.9%減)、純利益が1兆1000億円(同14%減)と、微増収を確保するものの大幅減益の内容だった。5期ぶりの減益見通しとなる。一方、年間の配当予想は5.2円(前期5.1円)と増配を維持した。
楽天証券経済研究所の窪田氏は「NTT株は株式分割もあり、高配当利回り株として売買されていたが、(年初から株価が上がったことで一時)予想配当利回りがNTTとしては相当低い約2.6%まで下がった。それに加えて減益予想を出したことから株が売られ、株価が下がり始めると売りが売りを呼んで下げが続いた」と分析する。
減益予想は一見するとインパクトが大きいが、これは前期の反動要因が大きく、見かけの数字ほど悪い内容ではない。前期は局舎や土地などの不良資産の売却を一気に進めたことに伴い、約1000億円の営業利益を計上していた。2025年3月期はこれらが抜け落ちることになる。純利益の減益幅がさらに大きいのは、前期のインターネットイニシアティブ株の売却益がなくなるためだ。
もっとも、一過性の要因を除いても営業利益の予想は前期比で横ばい圏にとどまる。とくに事業環境が厳しく、足を引っ張ると見込まれるのが、固定電話を手がけるNTT東日本とNTT西日本だ。東西を含む「地域通信事業」の2025年3月期の営業利益は2900億円(前期比33.7%減)と大幅減益を予想する。
NTTは、東西向けの老朽化設備への対応や「コスト削減のためのコスト」などでの投資も計画していると説明する。決算発表時に、島田明社長は「東西は2024年度で計画する利益水準がボトムだ。いったんしゃがんで、ジャンプしたい」と語っていた。
しかし足元の株価動向をみる限り、市場からは、今期の減益計画が来期以降の跳躍を見据えたものとしては理解されていないようだ。
個人が買い、海外投資家が売り続ける
松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストによれば、減益予想に失望して株を手放したのは海外機関投資家が中心で、個人投資家は株価の反発狙いで買い続けていたとみられるという。
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