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「全部嫌になった」角田光代、34年目の働き方改革 仕事スタイル、映像化…小説の未来をどう描く

東洋経済オンライン / 2024年6月27日 9時0分

――依頼を受けずとも、書きたいものは溢れてくるものですか?

正直まだわかりません。実は、源氏の文庫化の仕事などがまだ少し残っていて。順調にいけば夏くらいにはすべて終わるので、そこで初めて、本当に締め切りのない”更地”からの仕事が始まります。

もしかしたら書きたいものを何も思いつかないかもしれないし、満を持して持ち込んだ小説がボツになるかもしれない。箸にも棒にもかからず、来年はアルバイトをしているかも(笑)。本当に始めてみないとわからないことだらけです。

テーマ決めは「媒体ありき」だった

――そもそも扱うテーマというのは、これまではどう決めていましたか。

媒体ありきでした。例えば源氏物語のすぐ後に出た『タラント』(中央公論新社)という本は、基が読売新聞の連載小説でした。依頼を受けたのは、ちょうど東京オリンピックの誘致が決まったくらいの時期だったので、それに絡めてほしいという要望もいただいたりしました。

依頼してくれた会社はどこか。出版社なら、載せるのが週刊誌なのか、文芸誌なのか。書いてほしいのはどんなジャンル、テーマの小説なのか。そういう側面から決めていくケースが多く、ときには「興味が湧かないな」と思うテーマを扱うこともありました。

――そういった不本意な状況は今後なくなるわけですが、では逆に、今後もご自身のスタイルとして変えないであろうことは?

どこに目をつけるかを考える際、毎日暮らしている中で社会に対してなんとなく抱く”違和感”みたいなものを大事にしていて、その感じは今後も変わらないだろうと思います。

――近年ではドラマ化、映画化をめぐって原作者と制作者がトラブルになる事例が出ています。角田さんの作品にも映像化されているものは多数ありますが、どう感じますか。

作品の二次使用については本当に人それぞれ考え方が違うので、そこは原作者の考えを尊重しなきゃいけないと思っています。

私の場合は二次使用にまったく関わっていないんですね。預けたら預けっぱなし。でも、関わりたい人もいるし、どちらが正解というものではない。作った人の気持ちが尊重されるべきでしょう。

――作家にとって、自分の作品は子どものようなものだとも聞きます。角田さんはどう折り合いをつけていますか。

子どものような感覚は、私にはないかもしれない。小説を書いて世に出したとき、「メッセージは何ですか?」とよく聞かれますが、私にはとくにない。ただ書いただけなんですね。読み手が10人いれば受け取るメッセージは10通りあるのが当然と思っています。

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