倒産相次いだ「カプセルホテル」コロナ後の大変貌 徹底的な持たない経営でホテル事業の弱点を克服
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 12時40分
他方、健康関連企業や大学病院と協力し、異なるデータと睡眠ビッグデータを組み合わせる動きもある。結合するデータは、ウェアラブルデバイスで収集する活動データや食事データ、コンビニでの購買データ、大学病院のカルテデータなど。これらとつなぎ合わせることで価値を高め、より多くの研究開発に役立てようとしているのだ。
また、睡眠事業と宿泊事業の垣根を越えたビジネスも生まれつつある。たとえば大学病院からは、「宿泊して睡眠解析サービスを受け、疾病相当の人は大学病院で診療する」ためのホテルを作ってほしいと依頼が殺到しているという。2024年8月には、㈱NTTデータが品川に持つビル内にナインアワーズをオープンし、同社が計画するパーソナライズ・サービスにビッグデータが活用されることも決まっている。
こういった試みができるのは、空間が限られ、データを取得しやすい「カプセルホテル」だからだろう。
弱点を克服しようとして、「データ販売」にたどり着く
なんともしたたかな印象を受けるナインアワーズだが、睡眠事業が誕生したのは、むしろ「ホテル事業ゆえの弱点を克服するため」であった。
少し歴史を遡ると、ナインアワーズは、2009年に創業者が京都にブランド1号店をオープン。その経営相談を経営コンサルティング企業㈱リヴァンプが受け、2013年に同社が分社する形で運営会社㈱ナインアワーズが誕生した。しかし、その際に懸案事項となったのが、宿泊業が経済の浮き沈みに非常に影響を受ける事業モデルであることだ。
同社取締役の渡邊保之氏は、「当時から、いつか自然災害やオイルショックのようなインパクトが来ると予想しており、宿泊業が傾いた万一の際にも、経営を安定させられる別事業を模索していました」と振り返る。
検討をはじめた当初は、「デジタルに関わる事業にしたい」という漠然としたアイデアだった。だが、高齢化が進むなかでヘルステック事業が躍進をはじめ、日本人の睡眠への満足度の低さが注目されるなかで、行き着いた先が睡眠事業だ。
着想から5年が経過した2019年12月末、偶然にも、新型コロナ流行の直前に5億円の増資を受けることに成功。翌年1月から、医療機器メーカーなどの協力を得て睡眠解析サービスを準備する。
サービスを開始し、データ収集がはじまったのは2021年12月。人々が家にこもり、売り上げが激減していた時期だ。次々とカプセルホテルが倒産していた、まさにギリギリのタイミングだった。
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