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倒産相次いだ「カプセルホテル」コロナ後の大変貌 徹底的な持たない経営でホテル事業の弱点を克服

東洋経済オンライン / 2024年6月27日 12時40分

徹底的に「持たない」形態をいち早く取り入れる

創業時にもう1点、宿泊業のリスクヘッジとして導入された仕組みがある。徹底して「持たない」契約形態だ。

冒頭でも軽く触れたが、ホテル業界は初期費用が大きくなり、不況時には返済に苦労しやすいという弱点がある。

そこでナインアワーズは、土地建物はすべてオーナー会社が持ち、運営だけを請け負うビジネススタイルを取った。ボールペン1本、トイレットペーパー1つに至るまで自社では購入しない。人も採用・教育は担当するが、給与は店舗経費として請求する。昨今流入する外資系ブランドホテルなどに多い形態だが、カプセルホテル業界にあっては珍しかった。

この契約形態と増資、睡眠事業があったからこそ、コロナ禍で苦しい中でも赤字を最小限にとどめ、乗り越えることができたのだ。

宿泊業と睡眠事業、双方が密接に関係するナインアワーズのビジネス。その経営哲学は「事業を丸ごとデザインする」だ。ここでいうデザインとは、表に見えるサービスだけではなく、背景にある人やお金、データまでをロジカルに整理して形を整えていくという意味である。宿泊と睡眠解析サービス、ビッグデータの活用が相互に関わり合っているように。

2つの事業全てにおいてコンセプトを体現し、ゲストの動線や顧客想定までを計算して設計することを強く意識しているという。

重ねて、一度デザインしたら、その在り方を守り続けるのもこだわりだ。たとえば施設デザインは、デザインチームが提案したものを原則変えない。自分たちが口を出すことはもちろん、オーナー会社からの変更意見も受け付けない。オーナーからは広告用の張り紙や冊子の設置などもよく頼まれるそうだが、それも絶対に承諾しないという。

その理由を渡邊氏は、「iPhoneにストラップを付けるとシンプルで美しい佇まいが壊れてしまうように、一度でも特例を作ると、全てが崩れる要因を作ってしまうからです」と説明する。それに、特例があるとルールも変えなければならず、運営もしにくくなる。変わらないことで、細部まで設計したデザインやオペレーションを守っているのだ。

「カプセルホテルの海外輸出」に意欲

今ナインアワーズブランドは、東京、大阪、愛知、福岡、宮城で13ホテルを展開している。うち1軒が女性専用、1軒が男性専用だ。企業全体としては、仮眠ができる24時間サウナ『ドシー』、カプセルホテルに大浴場とサウナをプラスした『カプセルプラス』、オペレーションのみを受託しているホテルを合わせて全25軒を運営。目標は2030年に国内100ホテル、海外で50ホテルを運営することだ。

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