任天堂が「異端の経営者」を抜擢した納得の理由 日本企業と北米企業との「文化のミスマッチ」
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 10時0分
「任天堂の海外販売戦略における部分をつまびらかにした、おそらく初めての本でしょう」。5月に刊行した『崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男』について、そう語るのはエンタメ社会学者の中山淳雄氏だ。
なぜ、任天堂という会社で著者のレジー・フィサメィ氏が抜擢され受け入れられたのか。自身も日本コンテンツの海外展開を手掛けてきた中山氏に、日本企業と北米企業との違いを踏まえつつ話を聞いた。
任天堂の度量
本書ほど、ビジネスとプロモーションだけを描いたゲーム会社本はめずらしいですね。2008年の「Wii」販売におけるプライシングの交渉シーン、岩田聡さんとの別れなど、興味深く読みました。任天堂のものづくりについてはいくつかあっても、海外販売戦略をつまびらかにした、おそらく初めての本でしょう。
【写真】ハイチ移民の子として生まれたアメリカ任天堂の元社長兼COOのレジー・フィサメィが35年のキャリアで学んだ教訓と哲学とは?
ゲーム会社の海外支社は、本社の開発者の意見が絶対で、アメリカもヨーロッパのオフィスも、ヒエラルキーの下にあります。そういう中で、レジー・フィサメィさんは、日本の任天堂本社に対して強気で交渉していきます。
「E3」(世界最大のビデオゲーム産業の見本市)でのプレゼン動画を見ましたが、彼は気が強くて競争的。まさに当時は古臭く消極的だった任天堂にまったく似つかわしくない「立ちはだかる敵を叩きのめすのが私の性分です」という有名なフレーズどおりの印象を受けました。
10社近くもジョブホッピングして1カ所には落ち着かなかった彼がなんと16年間もの間アメリカ任天堂を託され、トップの職責を全うした。その任天堂の許容性の高さと会社文化を変えようとした試み自体が素晴らしく描かれた本だと思います。岩田聡さんは、「レジーとミスター・イワタ」と呼び合うパイプラインをずっと残していました。普通なら、間に英語の流暢な海外事業部長なども入れるものですが、本社トップが自ら現地を見に行き、レジーさんに直接昇進通知を手渡したりしているのです。
任天堂と岩田さんがレジーさんをどう扱ってきたか、その度量の大きさこそが“異人種”であったレジーさんが生かされて任天堂の海外部門が大きくなった背景にある、ということを読み込めた本です。
日本企業と北米企業とでは、文化のミスマッチが大きな壁になりがちです。主に、意思決定の違いですね。日本本社の10人の役員で海外戦略を決定するという時、その10人で誰1人海外在住経験がないという組織がけっこうあるのです。
この記事に関連するニュース
-
任天堂、「脳トレ」をヒットさせた驚きの海外戦略 ゲーム「ローカライズ挑戦」の知られざる軌跡
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 12時0分
-
「V字回復企業」と低迷企業、トップの決定的差 日本企業に「強いリーダー」がいない根本理由
東洋経済オンライン / 2024年6月18日 11時0分
-
任天堂を「ゲームの覇者」と捉える人に欠けた視点 失墜した日本メーカーの中で成功した根本理由
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 10時20分
-
任天堂の岩田社長が「転職面接」で私に語った未来 「落ち目」と言われた任天堂に転職を決意した訳
東洋経済オンライン / 2024年6月7日 9時0分
-
「任天堂は落ち目だ」それでも私が全てを懸けた訳 スモールビジネスだった業界に見いだした未来
東洋経済オンライン / 2024年6月4日 10時30分
ランキング
-
1関東「気動車王国」の離れ小島路線が面白い! 不思議な“右ハンドル”車両 3駅の路線に“スゴイ密度”であるものとは?
乗りものニュース / 2024年6月29日 15時12分
-
2意外な面倒さも? 財布いらずの「スマート支払い」、店側はどう思っているのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月30日 8時10分
-
3「押しボタン式信号」なぜ“押してすぐ青”にならないケースが? 納得の理由があった!
乗りものニュース / 2024年6月29日 16時42分
-
4ウイスキーが「おじさんのお酒」から激変したワケ 市場復活に導いたサントリーのハイボール秘話
東洋経済オンライン / 2024年6月30日 8時20分
-
5ソニー宮城拠点、250人削減=ブルーレイ、生産縮小
時事通信 / 2024年6月29日 15時49分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)