佐賀に新大学は必要?「県内進学率16%」の危機感 地元で賛否、少子化や定員割れでも大学作る意義
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 8時10分
「定員充足率や赤字、偏差値でしか地方大学を見られないというのはどうかと思います」
こう語るのは、佐賀女子短期大学長(学校法人旭学園)の今村正治氏。同氏は、2000年開学の大分県別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)設立に大きくかかわり、その後、出口治明学長のもとで副学長をつとめた。
旭学園は2026年4月に、佐賀県武雄市で新たな大学「武雄アジア大学(仮称)」の設立を目指している。佐賀県の西部にある武雄市は人口約5万人で減少傾向にあるが、2022年に西九州新幹線が開業して武雄温泉などへの観光客が増え、経済効果が期待されている自治体だ。
佐賀県民にとって大学進学=県外
武雄アジア大学の新設に対しては、案が浮上した当初から「少子化・人口減少の中、学生は集まるのか」と反対する声がある。佐賀県の大学進学率は43.6%で全国45位とワーストファイブ。年間の大学進学者約3400人のうち、3000人が県外の大学に入学している。
武雄アジア大学は定員140人を想定しており、前出の今村氏は「3000人が流出していると考えれば、県内だけで学生が集まる可能性はある」と反論する。そして「佐賀県の大きな問題点は、県内進学率の異常な低さ」と指摘する。長崎県と佐賀県の大学進学率はほぼ同じながら、県内大学進学率は長崎の約45%に比べて佐賀県は約16%にとどまるという。
佐賀県民にとって大学進学=県外という構図であり、県外に行けない若者が進学を諦めてきたケースも想定される。佐賀では4年制大学は2校、短期大学は3校あるが、うち短大1校は2024年に募集停止を発表した。県内大学進学率のさらなる低下が懸念されることもあり、県も2028年に佐賀県立大学の設置に取り組んでいる。
2026年の新設を目指す武雄アジア大学の総事業費は約36億円。うち武雄市が施設の整備費用など約13億円を支援し、佐賀県が6億円余りの財政支援を行う。残りの約16億円については旭学園が負担する。そして大学建設予定地の土地も武雄市から2030年まで無償提供される。大学新設について武雄市の小松政市長は「インパクトは大きい」と期待感を示す。
「この少子化の時代、大学ができて定住人口が増えることは、人口減少への歯止めとなる。大学は毎年学生が入ってくる“年をとらない組織”だから、若い人たちが一定のボリュームで住み続けるのは、地方自治体にとってインパクトは大きい」と語る。
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