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「世界初の手術」成功した医師のシンプルな原動力 「名医ほど大きく切る」は患者のためにならない

東洋経済オンライン / 2024年6月30日 18時0分

当たり前を疑わずに、これまでの方法の上であぐらをかいているようでは、患者さんが本当に望んでいることを実現することは不可能です。

当たり前と向き合いましょう。

その視点は、医療の現場だけで役に立つものではありません。必ず、新しく見えてくることがあるはずです。

「成功」こそが、次の挑戦の始まり

これまでのやり方を踏襲する。決まっていることをそのとおりにやる。それが、仕事のすべてだと思っている人が多くいます。

もちろん、1つひとつの作業を丁寧に行うことは大切なことですが、それだけでは、お客さんや仕事相手は充分には満足しない気がします。

なぜ、「このやり方でやれ」と教えられたのか? なぜ、「この決まりごと」があるのか? 誰が決めたのか? もっと、効率を上げ、質も高められるやり方があるのではないか。

私たちの生活は、格段に進歩してきました。

たとえば1953(昭和28)年にテレビが登場し、数年後にカラー放送が始まりました。その後、ビデオテープで録画ができるようになり、DⅤD、ブルーレイへと移行します。携帯電話の登場、スマートフォンへの進化。インターネットの普及と動画配信サイトの確立。そしてAIは、これからさらに進歩しようとしています。

それだけではなく、私たちの生活に直結する衣食住のレギュレーションも大きく変化してきました。

これは現状に甘んじることなく「もっといいやり方に変えられるのではないか」と、あくなき探求心を持った者が成し遂げてきたことです。

小切開手術を突き詰めながら、私も考えました。患者さんの体への負担をもっと軽くする手術方法はないのか、切開することなく手術はできないものか、と。

そして私は、内視鏡で心臓手術ができれば、小切開手術よりもさらに患者さんの体に負担をかけない手術ができると思いあたりました。いや、じつはそれ以前に消化器系、呼吸器系の手術に内視鏡が用いられるようになったときに、「どうして心臓分野では、内視鏡を使った診察や手術がないのだろう」と、不思議に感じてもいたのです。

でも、心臓という生命に直結するデリケートな箇所を切開することなく手術するという発想は、当時、日本はおろか世界のどこにもありません。

それでも富山医科薬科大学病院時代、勤務をしながら、私はずっと内視鏡心臓手術の研究を続けていました。

内視鏡で心臓の外側だけを眺めるのではなく、心臓を包んでいる分厚い膜の中に内視鏡を入れるなどして実験、心臓の表面を走る冠動脈をそこで見据えたときに確信しました。「ここまで血管が鮮明に見えるのか。冠動脈バイパス手術なら内視鏡で可能だ」と。

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