「女性主人公」の警察ドラマがいま増えるのはなぜ 主演は演技力に定評ある松岡茉優と小芝風花
東洋経済オンライン / 2024年6月30日 12時0分
そして1990年代の終わりには、中谷美紀主演の『ケイゾク』(TBSテレビ系、1999年放送)が人気を呼んだ。中谷演じるのは東大法学部を首席で卒業した新人刑事・柴田純。天才的な推理力を持ち、「あのー、犯人わかっちゃったんですけど」と言ってあっさり真犯人を見つけてしまう。
ただ社会人としては遅刻が多く、風呂にも入らず不潔であるなど変わり者として描かれている。恋愛にも無関心ではないが、上手くいっている感じはない。
このあたりは、『ギークス』の設定に重なっている。推理にかけてはすぐれた力を発揮する3人だが、普段の生活や恋愛においてはむしろ不器用で悩みも多い。そのアンバランスさが、柴田純に似ている。
『GO HOME』のほうにも、『ケイゾク』に似た部分がある。それは、部署の設定である。
柴田純が赴任早々配属されるのは、警視庁捜査一課弐係。未解決事件を捜査する部署である。そう聞くとなんとなく格好がいいが、実際は色々と複雑な事情を抱えたメンバーが集められた吹き溜まり的部署である。
『ケイゾク』と世界観を共有する戸田恵梨香主演『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(TBSテレビ系、2010年放送開始)の未詳事件特別対策係や水谷豊主演『相棒』(テレビ朝日系、2000年放送開始)の特命係もそうだが、警察ドラマには捜査一課など花形部署から外れた部署の活躍を描く“僻地もの”の系譜があり、『GO HOME』などは、そこにさらに一ひねりを加えたものに思える。
1990年代、「警察の日常」が描かれ始めた
1990年代は、女性主人公の台頭というだけでなく、刑事ドラマというジャンル自体の転換期でもあった。それまで刑事はあくまでヒーローだったが、刑事もまた普通の人間として描かれるようになった。
その記念碑的作品が、織田裕二主演の『踊る大捜査線』(フジテレビ系、1997年放送開始)である。
「刑事もサラリーマンである」というコンセプトのもと、銃撃戦のような派手な場面ばかりでなく、パトカー1台を出動させるにも上司のハンコが必要であるとか、一般企業にもありそうな職場としての現実が初めてちゃんと描かれた。「警察の日常」を描く警察ドラマの誕生である。
『ギークス』は、そんな警察ドラマの流れを受け継いでいる。
3人のギークたちのモットーは「ノー残業」。毎週金曜には行きつけの居酒屋に集まって職場の愚痴などを言い合う。事件の推理はそのついでにすぎない。ちょっとした軽い気持ち、ゲーム感覚で謎を解く。捜査会議ならぬ井戸端会議で事件解決というわけだ。
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