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「女性主人公」の警察ドラマがいま増えるのはなぜ 主演は演技力に定評ある松岡茉優と小芝風花

東洋経済オンライン / 2024年6月30日 12時0分

古典的な刑事ドラマなどでは、刑事たちは昼夜を問わず事件を捜査し、犯人逮捕のために生活のすべてを捧げる刑事の姿が往々にして描かれる。当然、夕方5時の定刻で仕事が終わりということはない。「ノー残業」などもってのほかという感じだ。

ところがこのドラマは、その真逆を行く。そしてそれでも事件は解決する。「働き方改革」の時代の警察ドラマである。

働き方改革の要素は、綾野剛と星野源がダブル主演を務めた『MIU404』(TBSテレビ系、2020年放送)にも盛り込まれていた。

綾野剛演じる伊吹藍と星野源演じる志摩一未が所属する第4機動捜査隊は、麻生久美子演じる機動捜査隊長の桔梗ゆづるが、隊員の負担を減らす働き方改革を実現するために立案した部署という設定だった。

『ギークス』は、「警察の日常」を描くだけでなく、働き方改革という時代の変化を反映し始めた警察(刑事)ドラマの流れを汲んでいる。

そもそも、『ギークス』の松岡茉優も『GO HOME』の小芝風花も警察官役ではあるが刑事役ではないというところが面白い。警察ドラマの定番である刑事ドラマとは、まずそこが異なる。

今年は、かつて大人気だった名作刑事ドラマが復活したり、再び注目を集めたりする現象が続いている。

5月には、『あぶない刑事』シリーズの最新劇場版第8作となる『帰ってきた あぶない刑事』が公開され、ヒットした。また『踊る大捜査線』シリーズも、柳葉敏郎演じる室井慎次を主人公とする映画版による再始動が発表され、ファンを大いに喜ばせた。

さらには『古畑任三郎』シリーズも放送開始から今年がちょうど30周年。関東地区限定ではあるが一挙再放送が始まり、SNSなどでもかなりの反響を呼んだ。

それぞれ作風は異なるが、いずれも事件の解明から真犯人逮捕という刑事ドラマの基本フォーマットに忠実という意味では変わらない。王道パターンは、時代を超えて受け継がれるということだろう。

だがそのフォーマットに従っている限り、新鮮味を出すことはなかなか難しい。まったくの新しい作品ではなく、かつての名作が揃って注目を浴びている現実からは、そんなことも考えさせられる。それだけ歴史を重ね、刑事ドラマも転換期を迎えているというところかもしれない。

警察・刑事ドラマの転換期のなかで

そのなかで『ギークス』と『GO HOME』は、警察ドラマや刑事ドラマの新しい方向性を模索した試みのように見える。

単なる奇をてらった変化球ではない。1990年代『踊る大捜査線』をきっかけに始まった刑事ドラマの警察ドラマ化という大きな流れを踏まえつつ、いまの時代に合った警察ドラマをつくろうという意図が見て取れる。刑事という存在も、そのなかで新たな立ち位置が見つかるのかもしれない。

演技力に定評のある松岡茉優と小芝風花をそれぞれ主演に配したのも、そう考えれば合点がいく。

刑事や犯人ばかりに焦点を当てた人間ドラマではなく、警察という職場に働く普通の人たちの人間ドラマに新しい鉱脈はあるのか? そんなチャレンジに相応しい、力量確かな2人であるだけに、期待が高まる。

太田 省一:社会学者、文筆家

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