アップルが"魔法のような"使い勝手を貫く理由 動作にかかる待ち時間もワクワクさせてしまう
東洋経済オンライン / 2024年7月1日 13時0分
そのような目には見えない最適化の数々で、iPhoneのキーボードは入力しやすくなっているのだ。
魔法をApple Intelligenceへ
普段われわれが使っているiPhoneや、Macのインターフェースにもさまざまな“魔法のタネ”が仕込まれている。
マジシャンは前口上を述べ、あなたの目の前で「パチン!」と指を鳴らしてみせる。タネを見破ろうとしているあなたは、当然その指の音に注目してしまう。その間に、マジシャンの左手の袖口にスルリとタネであるコインが仕込まれる。
アップルの魔法も原理的には同じだ。例えば画像をクリックして、低解像度の画像が段階的に開いていくアニメーションを見ている裏で、高解像度の画像が準備されている。
もちろん、アニメーションにはどのアイコンの画像が開いたのかを示す役割もある。しかし、同時にユーザーの注意を引いて、待ち時間を感じさせず、処理速度の足りない部分をカバーする役割も担っているのだ。
iPhoneやMacを注意深く観察すると、これらのトランジション(遷移)効果があらゆるところに使われていることに気が付くはずだ。アップルのユーザーインターフェースのガイドラインには「これらの効果を使ってユーザーを退屈させず、魔法のような効果を与えましょう」と、はっきりと書いてあるのだ。
新しいApple Intelligenceでは、生成AIの動作により時間がかかるので、この魔法の効果はより効果を増している。
Siriを呼び出すとiPhoneの画面のフチから内側に向け、虹色の光が脈立つ。この虹色の光は魔法のような雰囲気を与えるとともに、実際にユーザーの注意を惹いて、ユーザーに待っているという意識を与えずに処理時間を稼ぐのである。
例えば、Apple Intelligenceに文章を要約してもらうとしよう。
iPhoneの画面の縁は虹色に輝き、文章が表示される部分に虹色のバーが現れる。ユーザーは「ここに文章が現れるのだ」と気付き、そこに注目する。すると、虹が波打つような効果とともに文章が生成される。
アップルの端末に搭載されたチップの処理速度がいかに速いとはいえ、生成AIには処理するための時間が必要だ。この派手な虹色の効果は、その待ち時間を感じさせないために使われているのだ。
生成AIで画像を作る機能においては、さらに長い待ち時間のために、虹色の玉が脈打ち、さまざまなワードが周囲から浮かび上がり(通常の生成AIでは「プロンプト」と呼ばれる、殺風景な画像)、虹色の玉の周りをフワフワと漂って、最終的に膨れ上がった虹色のフレームの中に絵柄が生成される。
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