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任天堂「あえての技術劣化」が業界に与えた好循環 ゲーム業界が「30兆円市場」に成長できた訳

東洋経済オンライン / 2024年7月2日 11時0分

コロナの後、やはりリアルの場で会うことが大事だという感覚が生まれましたし、任天堂の打ち出す遊び方は、今後も重要なものであり続けると思います。

ソニーは映画を売るやり方、マイクロソフトはPCベースでOSを売るやり方。そこに、任天堂という玩具的な第三極があることは、世界のゲーム業界にとって大事なことと言えるでしょう。

任天堂が弱くなると、逆に、他社も踏み切れなくなるということが起きるのではないでしょうか。任天堂が家庭用ゲームというファミリーゾーン、低年齢層ゾーンで、最初のゲームユーザーを作ってくれるからこそ、「Xbox」や「プレイステーション」などにユーザーが流れていくわけです。

「Wii」と「ニンテンドーDS」がなければ、ゲーム業界の30兆円市場は存在しなかったかもしれないとすら思います。次は何ギガだ、何テラだと映像勝負の業界になっていれば、ユーザーは離れていったでしょう。任天堂は、低年齢層への間口を広げて、ゲーム人口をもう一度掘り起こしたのです。

子供は、「アンパンマン」のように線の少ない漫画を好みます。大切なのは、キャラクターがいて、その物語をたどるということです。むしろ解像度を荒くすることが必要であったりもするでしょう。ゲームは、「優しいリアル」でもあるのです。

任天堂は、発表したときの「アハ体験」の大きさで人気を博してきた会社でもあります。びっくりするようなハードウェアが発表されて、そこに、いつも大好きだったマリオやゼルダが、それまでとはまったく違う形で現れる。ハードとソフトのWコンビが成功の確度を決めているのです。

3代目でカリスマ社長だった山内溥さんは、「我々は遊びを提供する玩具屋であって、キャラクタービジネスをしているのではない」ということを明確におっしゃっていました。任天堂の売り上げは、長らく「ゲーム事業」1本。ハードとソフトの違いはあっても、多面的な事業展開をするような会社ではなかった。

しかし、時勢に合わせて変化してゆき、2016年には、初めて「モバイル・IP(知的財産)関連収入等」という項目ができました。キャラクター商品の展開など商品化を広げることにも事業の軸足を広げていこうという姿勢に変えたのです。

これがのちにUSJ「スーパー・ニンテンドー・ワールド」や映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」につながっていきます。任天堂にとって大きな転換点だったのではないかと思います。

コンテンツ事業の海外展開に必要なもの

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