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ゴーストタウン化させない「小樽」の"生き残り策" 観光都市から「健康で長く暮らせる街」へと進化

東洋経済オンライン / 2024年7月2日 10時30分

この様子を見た市の担当者は、1人また1人と変化していく。手を差し伸べ、イベントに協力し合うようになったのだ。

2024年現在、ウエルネスタウン構想の活動拠点となっているのは、ウイングベイ小樽1階に入居する「済生会ビレッジ」だ。2021年3月にオープンし、北海道済生会が運営している。

櫛引氏がかつて頭の中で描いていた、リハビリ施設や相談支援センター、発達支援事業所、就労支援施設などの複合施設が並ぶ。

筆者も体験した「保育園留学」

2023年7月からは、将来的な移住促進への架け橋となるべく、「保育園留学(移住体験)」の受け入れが始まった。

これは、株式会社キッチハイクが提供するプログラムで、留学を希望する家族は、市内の民泊施設に1〜2週間寝泊まりし、自炊をしながら、子どもを現地の保育園や発達支援事業所に通わせる。

都内在住の筆者も、実際にこの冬、保育園留学制度を利用した。

感動したのは、医療や福祉の充実度だ。近接地に医療機関と保育園、発達支援事業所がまとまっているため、移動が非常に楽。買い物施設も併設しているため、行き帰りにすべてをすませられる点が魅力だった。

都心と異なり、ゆたかな面積を生かしたのびのびとした空間で、心置きなく遊ぶ子どもの姿は、都内で暮らしているときとはまったく異なる姿で、親の心が揺さぶられた。

すぐに移住とはつながらなくても記憶には残る。これから体験に訪れる人にとっても、良い体験となるのだろう。

一方で、すでに移住を始めた人たちもいる。医療従事者だ。

「地域のあちこちとつながった、包括的な医療福祉の取り組みに興味を持ってくれた若者たちが住み始めています。わざわざ小樽に移住してきてくれた職員もいます。こうして雇用を生んでいること、住民を生み出すことに寄与できることはうれしいですね」(櫛引氏)

移住を考える人も出てくるのでは

この取り組みの主眼の1つは、居住者が離れていくことを食い止めることにある。

だが、見方を変えれば、暮らしやすいインフラ――、例えば、商店や居宅、教育、そして医療福祉などがあれば、移住を考える人たちが出てくるのではないだろうか。

筆者が滞在を通じて感じたのは、たった1週間とはいえ、観光で訪れることと、暮らすために訪れることは見える景色がまるで異なるという点だ。

確かに首都圏は便利だ。地方都市と比較をしてしまえば、地方都市のほうがあらゆる点に不便さは感じる。

しかし、街の繁華性以上に、住民が健やかに暮らすしくみが整っていることは、心身にゆとりを持たせるために必要なのではないかと、子どもの様子を見ていて痛感した。

永見 薫:ライター

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