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「消臭力」がトイレから寝室まで勢力を広げた本気 消臭芳香剤大手・エステー「家庭に6個は置ける」

東洋経済オンライン / 2024年7月2日 8時50分

消臭芳香剤と並んで投資を強化するのがペットケアだ。ペットケアを含むホームケア事業は売上高の1割程度にすぎないが、今年6月に花王から譲受した猫用システムトイレ「ニャンとも清潔トイレ」関連事業をテコに、育成を進める考えだ。

期待を寄せる商品の一つが、ニャンとも清潔トイレの「おしっこチェックキット」。尿を採取するキットで量や濃度を確認し、猫の健康状態を手軽に確認できる商品だ。キットを動物病院で検査し、猫を病院に連れて行く必要性があるかを事前に調べられる。

花王時代はECを中心に販売していたが、現在はドラッグストア等への営業を強化している最中だ。エステーの持つ消臭の技術とかけ合わせた商品開発も進め、拡販を狙っていく。

「猫の寿命は伸びており、1頭にかける金額も上がっている。猫は病気を隠す傾向にあるため、手遅れになる前に気づける健康チェックの商品は伸びしろがある。今後ベンチャー企業との連携や、猫がリラックスできる香りの開発など、猫のウェルネス領域を強化したい」(上月社長)

新規事業への投資も強化する。核となるのが、森林研究の中で発見した技術「クリアフォレスト」の活用だ。北海道の樹木であるトドマツから抽出した成分で、消臭効果や大気汚染低減、森林浴の効果があるという。

これまで法人向けに原料供給や一部自社商品の開発も行ってきたものの、売り上げ規模は大きくなかった。足元では、クリアフォレストのリラックス効果を利用したアロマスティック「ルナマイン」を新たに立ち上げた。手首などに塗って気分転換できることをアピールし、ドラッグストアでの拡販を計画している。

リラックス効果をもたらす森の成分は、家庭だけでなくオフィスなどの需要もあるとみている。今後、積極的に商品を投入していく構えだ。

「創業家」に頼らない経営へ脱皮

エステーの会社の体制も大きく変化している。過去10年間は、前社長の鈴木貴子会長を始めとした創業家が経営の根幹を担ってきた。一方、昨年6月から舵取りを担う上月社長は1987年にエステーに入社後、営業やマーケティングなどを経験してきた生え抜きの社長だ。

「これまで、社内には創業家出身の社長が言ったことに従い、それで失敗しても仕方ないという風土が正直あった。今後は全員経営で、社員がアイデアを自分から提案できるよう働きかけていく」と、上月社長は意気込む。

たとえば、若手社員を対象にしたプログラムでは、社外講師による経営に関するレクチャーや海外でのフィールドワークを実施。その後、新事業に関するプレゼンテーションを経営層に行い、期待値の高いアイデアの事業化を目指す。

芳香剤ではP&G、ペットケアではユニ・チャームなど、ライバルとの差は大きい。消臭芳香剤、ペットケア、独自技術など、それぞれ新発想でシェアを奪取できるか。上月社長の手腕が問われることになる。

伊藤 退助:東洋経済 記者

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