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無印良品の「冷凍食品」結局どれが売れているのか 「キンパ」だけじゃないこだわりの裏側

東洋経済オンライン / 2024年7月3日 11時0分

「冷凍食品=手抜き」という、料理をする人が持つ罪悪感を払拭するのはなかなか簡単でないが、そうした消費者の心情にも、無印はアプローチしている。たとえば、10分以内で作れることを売りにした冷凍食品シリーズ「フライパンでつくるミールキット」シリーズがそれだ。

冷凍食品にはレンジであたためるだけ、という商品が多いが、このシリーズでは、あえて最後の仕上げは自分自身でするように設計されている。しかし、手作り感のために、消費者にわざわざフライパンを汚す手間をかけてもらうだけのメリットはあるのだろうか。聞くと、理由が2つあるという。

「まずこの商品は、味と食感の両面で、具材とソースを分けたほうがおいしくなるためです。もうひとつは、冷凍総菜を使うことへの罪悪感を払拭してもらいたいためです。フライパンでの加熱と、フライパンからお皿への盛りつけだけはご自身でやっていただく。このひと手間にも価値はあると考えました」と日向さんは語る。

なお、この商品は、発売時には一袋の容量が1人分に設定されていた。これは都市部での単身世帯比率の高まりを考えてのことだったという。ところが家族世帯からの要望に応えるかたちで、当初のコンセプトを捨て、昨年末に容量が2人分へと変更された。

同時に、袋の中身全体が見える透明のパッケージから、中身も確認できながら調理後のイメージが伝わるパッケージにリニューアルされた。

結果はすぐに数字に表れた。味は変えていないのに、販売個数は前年同期比で3.5~4倍に達しているという。この伸びは、無印の狙いどおり、冷凍食品を使うことに罪悪感を覚えるファミリー層も取り込めているからなのかもしれない。

家族の時間、ひとりの時間をもっと特別に

さて、ここまで無印の動向を見てきたが、ここから「冷凍食品の未来図」が見えてくる気もした。

今年4月に、日本冷凍食品協会が、昨年度の冷凍食品の利用状況について公表したが、人気アイテムのうどん、コロッケ、炒飯、ギョウザが不動のトップ4だったことが確認された。

一方、冷凍食品は以下のようなキーワードで分類されている。「食卓総菜」(主菜になる商品)、「個食化」「健康志向」「環境対応」の4つだ。

健康志向と環境対応の2つは、とくに目新しいキーワードではないが、あとの2つである「食卓総菜」と「個食化」はもちろん、各社の重要開発テーマとなっている。無印の場合は今回紹介してきたような、さまざまな消費者心理に寄り添う形で、差別化しようとしているように感じられた。

コロナ以前から二拠点生活を続けている筆者にとっても、冷凍食品はコロナ禍でぐっと身近な存在になった。たしかに無印の商品に限らず、ちょっとしたこだわりをうたった冷凍食品に対しては、少し高いなと感じる時もある。

一方で、高いだけのおいしさと幸福感を与えてくれるなら、ぜひ買いたいという気持ちにさせられる。これからの冷凍食品に求められる価値をひと言で表せば、「忙しい毎日に、ちょっとしたご褒美を」かもしれない。

無印が、既存の「安い」「手軽」がメインの冷凍食品の、さらに一歩先の市場を掘り起こせるかどうか。今後も興味深い展開を消費者に見せてくれるかもしれない。

竹下 大学:品種ナビゲーター

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