「ペイディの黒字決算」ではみえないBNPLの苦難 ジャックスは事業撤退、軌道修正を図る動きも
東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時50分
ペイパルはここで調達した資金を0.5%といった超低金利でペイディに融通している。ペイディは自ら直接調達するよりも大幅に金融コストを抑えられている。
ペイディの後払いを導入している加盟店に対しては、売上金の「100%入金保証」を謳っているが、保証を最終的に行うのもペイパルだ。無償で提供している。
これからペイディが成長していくうえで強大な親会社であるペイパルの存在が大きいのは事実。ただ現状は強く依存することでBNPLサービスを提供しているのが実態だ。
前出の有識者は「ペイパルがこのままペイディを持っていても買収資金の3000億円に見合うまでスケールさせることは難しい」と見通す。一方、「売却するにしても現在の企業価値に照らして大きなロスが出る」とし、「収益を高めなければ八方塞がりになりかねない」と指摘する。
BNPLのビジネスモデルをめぐっては、以前から海外を中心に収益性の低さが指摘されてきた。国際決済銀行(BIS)は昨年12月に公表したリポートで次のように指摘している。
「主要BNPL事業者は収益性の課題に直面している。2018年以降、とりわけマーケティングや管理・技術費用などの高い営業経費が事業者の黒字化を妨げている。さらに貸倒損失の増加と(中略)競争激化により、2021年から2022年にかけてのBNPL事業者の資産収益率(ROA)は著しく低下している」
BNPL事業者にとって主な収益源となっているのは加盟店からの「手数料」だ。
クレジットカードと異なり、利用者から手数料や利息を徴収しない一方、加盟店からクレジットカードより若干高めの手数料を受け取る。だが、BISの指摘のとおり、先行投資や貸倒費用がかさんでいるのが現状だ。
海外事業者と国内事業者の相違点
収益性の課題を認識されたことにより、BNPL事業者に向けられる評価も変わった。
ソフトバンクグループが出資するスウェーデンのBNPL事業者クラーナは2021年の資金調達時で企業価値が456億ドルだったが、翌2022年には67億ドルにまで下落。それまでの高い期待とは一転した。
収益性に改善の兆しは見られる。クラーナの2023年の営業損失は約480億円(32億スウェーデンクローナ)となり、前年から約7割縮小。直近2024年1~3月の営業損失も約39億円(2.6億スウェーデンクローナ)と前年同期比約8割の縮小となっている。
アメリカのBNPL事業者アファームも1~3月の営業損失が1.6億ドル(約255億円)と前年同期比で5割近く縮小した。
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