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「ペイディの黒字決算」ではみえないBNPLの苦難 ジャックスは事業撤退、軌道修正を図る動きも

東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時50分

だが、両社とも依然として大規模な赤字体質であることに変わりはない。

むしろ強く懸念されるのは国内勢の行方だ。そもそも日本と海外ではBNPL市場の様相が大きく異なっている。事業者の収益性の低さは国内外で共通だが、BNPLの利用ニーズに関しては大きな差があると考えられる。

というのも、クレジットカード利用でリボ払いが普及している海外では、「利息負担のあるクレジットカード」と「利息負担のないBNPL」の比較で、BNPLを利用するニーズが消費者に生まれる。

これに対し日本では、1回払いの「利息負担のないクレジットカード」が一般的。クレジットカードと比較した際のBNPLの利用ニーズは極めて弱い。

収益性の低さを背景に、国内では撤退や軌道修正を図る動きも目立つ。

信販大手のジャックスは、子会社が9年にわたって提供していたBNPLサービス「アトディーネ」を2023年9月に終了した。採算悪化と今後の規制強化の動きなどをにらみ、事業の継続は困難と判断した。

消費者金融大手のアイフルも、2020年6月から「ミライバライ」というBNPLサービスを手掛けている。だが、貸し倒れが想定以上に膨らみ、サービスを提供する子会社は発足から3期連続で営業赤字。一度も黒字を確保できないまま、事業強化を図る目的で今年1月に別の子会社に吸収合併させた。

カギは貸し倒れ抑制とオフライン決済

こうした中、打開策を模索する動きも見られる。「NP後払い」や「atone(アトネ)」を提供するネットプロテクションズ。持ち株会社は東証プライム市場に上場する企業だが、直近2年は営業赤字が続く。

広報責任者は、「利用者の未払い率は低下しているが加盟店開拓やシステム管理のための人員増で費用が重くなっていた」と話す。株価も上場した2021年から下落が続き、現在は上場直後の最高値からおよそ10分の1の水準で推移している。

同社は延滞事務手数料の徴収を開始することで貸し倒れを減らし、2025年3月期は第2四半期(7~9月)から黒字化を図る考えだ。そのほか月額制でポイント還元率の高い新サービス「atoneプラス」を今冬に開始する予定で、さらなる利用者の開拓に乗り出す。

今年2月からBNPLサービス「アトカラ」を提供している三井住友カードも突破口を見いだそうとしている一社だ。GMOペイメントゲートウェイ、GMOペイメントサービスと提携してサービスを開始した。

ほとんどのBNPLサービスはECでの利用に限られる。それに対してアトカラは、ECに限らず三井住友カードの決済端末stera(ステラ)があるリアル店舗でも利用できる。すでに数多くの店舗に置かれたsteraを活用することで加盟店開拓費用を低減し、各社の与信ノウハウを持ち寄ることで貸し倒れの抑制を図る戦略だ。

リアル店舗のオフライン決済市場はBNPLの開拓余地が大きく、ECよりも貸し倒れが生じづらい。アイフルのミライバライも今後の事業強化の中心はオフライン決済だ。ペイディも「貸倒率は年々下がっている」といい、収益拡大に向けてオフライン決済の強化を視野に入れる。

収益性に苦しむ事業者が後を絶たない中、BNPLは利益を生み出すビジネスモデルへと転換できるのか。各社の次の一手が問われている。

注意が必要な「分割払いのBNPL」

分割払いのBNPLは、日本で割賦販売法の対象となっており、事業者は信用情報機関に信用情報を提供する義務がある。しかし利用者には積極的にそのことを伝えていない。そのため分割払いのBNPLの支払いが滞納した場合、将来的にクレジットカードの発行や利用ができなくなるおそれがある。安易な利用には注意が必要だ。

北山 桂:東洋経済 記者

髙岡 健太:東洋経済 記者

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