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池上彰が「国公立大学の無償化」を提言する理由 "Fラン"大学は淘汰、専門職大学は増加と予測

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 19時30分

さらに国の子育て支援制度の多くや、大学の奨学金貸与の条件などにも所得制限が設けられており、世帯年収が910万円を超えると教育費の自己負担が一気に増します。そのため家計のやりくりが大変だと感じている子育て世帯は多いのです。

明るい未来、暗い未来を大胆予想

奨学金問題解決には国公立無償化しかない

大学の年間授業料と入学料の合計平均は、2023年度で国立が約82万円、私立は約120万円です。この三十数年間で、国立は2倍、私立は1.6倍になりました。

しかしバブル崩壊後の平成の間、日本はデフレで賃金がほとんど上がりませんでした。

さらに就職氷河期と呼ばれる就職難、小泉純一郎政権の構造改革による「非正規雇用」拡大などが重なり、大学を出ても非正規雇用でしか働けない若者は増え続けました。そうした中で、奨学金を借りる人も増加、返済に悩む人も増加しています。

なお奨学金という言葉は、国際的には進学によってもらえる返済不要のお金のことを指します。

いずれ返さなければいけない、日本で「貸与奨学金」などと呼ばれているものは、本来は「学費ローン」です。いずれ返すという意識が薄いまま借りてしまう人が多い現状を鑑みると、日本でも「学費ローン」と呼ぶようにしたほうがいいでしょう。

では大学進学にまつわる奨学金問題は、2040年に向けてどうすべきなのでしょうか。

高校を無償化すべきだと前述しましたが、私の個人的な希望をいえば、高校だけでなく大学まで学費を所得制限なしで完全に無償化すべきだと考えています。2040年に向けて、実現してほしいことのひとつです。

大学の学費が無償化されれば、家計の状況に関係なく、大学に行く子どもたちが増えていきます。そうして高度な教育を受ける人が増えれば、優秀な人材の裾野が広がり、長い目で見て日本の発展につながっていくはずだからです。

現在は年収270万円(目安)までの世帯のみ大学無償化、年収380万円(目安)までは授業料の一部を免除、という制度があります。また3人以上の子どもがいる多子世帯は、2025年度から学費を無償化とすると発表されています(ただし卒業後の子が扶養を外れ、扶養する子どもが2人以下となると対象外)。

フランスとアメリカの場合

所得制限なしでの大学無償化は無理だと思うかもしれませんが、フランスの場合、EU加盟国国籍の人がフランスの国立大学に入ると修士号まで進んでも5年間で合計996ユーロ(約16万円、1ユーロ=160円で換算)しかかかりません。格安です。日本も少なくとも国公立大学は、無償化すべきでしょう。

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