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池上彰が「国公立大学の無償化」を提言する理由 "Fラン"大学は淘汰、専門職大学は増加と予測

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 19時30分

一方でアメリカは、2022~2023年の大学の年間学費の平均が私立大学で3万9723ドル(約596万円)、州立大学(州外学生の学費)は平均2万2953ドル(約344万円)、州立大学(州内学生の学費)は平均1万423ドル(約156万円)となっています(2022年9月US News調べ、1ドル=150円で換算)。

これを4年、あるいは修士まで6年など通うとなると、私立大学なら数千万円が必要だということです。

アメリカはその分、給付型の奨学金が充実しています。ハーバード大学やスタンフォード大学を卒業できるレベルの成績優秀者であれば学費は無料ですから、完全実力主義ですが、そこはバランスが取れているといえるかもしれません。

フランスとアメリカで大学の学費にこれほど違いがあるのは、考え方、信条の違いによるところが大きいのです。

フランスなどのEU諸国は、基本的に「子どもは社会の宝だ」「子どもは社会が育てるべきだ。だから教育費は一切かからないようにしよう」と考えます。

一方アメリカは、特にトランプ前大統領のような共和党政権が「子どもは社会が育てるべきだなんて、それは社会主義だ」「子どもが大学に行くかどうかは個人の自由だ。それを全部税金で無償化するなんて、そんな社会主義的な考え方はとんでもない」という発想になるわけです。

Fラン大学は淘汰され専門職大学は増える

大学の学費で比べると、日本の教育政策はアメリカとフランスの中間に位置づけられます。日本の大学の学費がアメリカほどは高額でないのは、国民の税金を「私学助成金」という形で私立大学に相当つぎ込んでいるからです。

私としては、少子化対策の意味も込めて、フランスのようにもっと高校や大学の学費に税金を使うべきだと考えています。ただし、大学に勉強ではなく遊びに行くようなレベルの人がたくさんいたら、税金の投入に反対する人も増えてしまうでしょう。

入試問題が全然解けなくても受かるような低レベルの大学、定員割れ状態の大学は「Fランク(Fラン)大学」などと揶揄されています。少子化で18歳人口がどんどん減っている中、こうした定員割れの大学は淘汰して、そこに支払っていた私学助成金などの分を確保していかないと、大学無償化のための税金の投入は国民の理解を得られないでしょう。

一方で今、専門学校が「専門職大学」としてどんどん大学化されています。服飾や美容など、専門学校で学ぶことをそのまま教えるのですが、卒業したら大学卒としての学位をあげるという学校です。

勉強が苦手であっても、美的センスがあったり手先が器用だったり、そうした長所を生かした専門職を目指す人たちに、学位を取るという選択肢が増えているのです。

Fラン大学で勉強もせず就きたい仕事も見つからず卒業する人が増えるよりも、専門職に就いて活躍する人が増えるほうが、社会にとってもいいはずです。今後も専門職大学は増えていくと思います。

また専門職大学に入る生徒にとっては、たとえば美容師になりたいと思って技術を学びつつ、大卒の肩書があればいざというときに全然違う仕事にも就きやすい、といったメリットがあります。

それと同時に専門学校側のメリットとしては、理事長の「大学の理事長になりたい」という憧れを叶えることができるというわけです。

東京にいるとなかなかわかりませんが、特に地方の専門学校の理事長が、4年制の専門職大学、あるいは2年制の専門職短期大学への転換に熱心です。

池上 彰:ジャーナリスト

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