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アルバイト25年、時給1200円から上がらない現実 声優しながらバイト掛け持ち、睡眠は5時間未満

東洋経済オンライン / 2024年7月5日 8時0分

「(違法な)内職商法みたいなものですよね。でも、こちらも悪しき習慣とわかってて金を払ってる。実際、それで仕事ももらえているので……」とトモヤスさんは言葉を濁す。

置き去りにされている非正規労働者

最近は年齢のせいか腰痛や瞼の痙攣といった体の不調が増えた。声優を続けるには、働く時間を減らして睡眠時間を増やしたいが、収入水準は下げられない。となると時給を上げてもらうしかない。

特に夜間の居酒屋は働き始めて25年近くなるが、時給は1200円からほとんど上がっていないという。現場ではシフトや売り上げの管理を任されることもあるなど人間関係は良好なので転職はしたくない。一方で過去には賃金の未払いもあり、会社組織としては問題も多く、1人で賃上げを求めても門前払いされるのが落ちだろう。

そこでトモヤスさんが試みたのが、1人でも入れるユニオン(労働組合)に加盟して会社と交渉することだった。全国のパートや派遣労働者たち約3万人とともに「非正規春闘」という取り組みに参加、「一律10%以上の賃上げ」を求めたのだ。

非正規春闘は、個人加盟できる労働組合などが集まってつくる実行委員会が昨年からスタート。今年は107社に要求を行い、このうち59社から賃上げ回答を引き出したが、残りの48社はゼロ回答だった。賃上げ幅も平均すると、3、4パーセントにとどまったという。大手企業を中心とした春闘が「歴史的な高水準」などと評価される陰で、非正規労働者が置き去りにされている実態が浮き彫りとなった。

居酒屋の賃上げ交渉は続けるとして、トモヤスさんに言わせると、「ダブルワークの残業代が出ないこともつらい」。

仕事を掛け持ちする場合、法律上は合計の労働時間が法定労働時間を超えると、会社は25%の割増賃金を支払わなければならない。支払い義務があるのは後から雇用契約を結んだ会社。トモヤスさんの場合、1日の労働時間は10時間を超えており、勤続10年のIT関連会社に残業代を請求する権利がある。賃上げが無理でも残業代があれば、勤務時間を短くして体を休めることもできるはずだ。残業代が出ないとはどういうことか。

「請求していないので。そんなことしたら心証悪いですし、働きづらくなりますから」

法律で強制力を持たせればいい

雇用が不安定化する中でアルバイトを掛け持ちする人は増えているし、政府も働き方改革と称して副業を推進している。法律が労働時間を合算方式にしているのはダブルワーカーの長時間労働を防ぐためでもある。しかし、実際は「残業代をもらっている人なんてほとんどいないんじゃないですか」。

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