「星野トマムを売却」中国企業の"謎だらけの行動" 売却に至った複雑事情、売却先は何者なのか?
東洋経済オンライン / 2024年7月5日 17時0分
豫園商城が同リゾートを約160億円で取得すると発表したのは、2023年2月と最近のことだ。つまり、豫園商城は親会社の復星国際が非中核事業の売却を進めているさなかに、キロロリゾートを取得している。
復星国際と豫園商城の決算資料を分析すると、2023年に入って復星国際の業績が回復した一方、豫園商城は債務危機が顕在化し始めたことがわかる。
同社は2023年前半の業績は堅調だったが後半に入ると失速し、通年の純利益は前年比45%減少し20億2400万元(約445億円)だった。また、今年1~3月の純利益は前年同期比43%減少し1億8000万元(約39億円)だった。豫園商城は減益の理由を「不動産収益や投資収益の悪化」と説明した。
業績悪化に伴い、債務リスクも増している。豫園商城の今年3月末時点の負債比率は68%。短期負債101億3100万元(約2230億円)を抱えているが、保有現金は91億7100万元(約2000億円)にとどまる。
同社は2023年12月期決算資料で、1年間で資産100億元(約2200億円)を売却したと明かし、今後も負債比率を下げるために非中核プロジェクトから撤退しつつ、資金調達を目指すとしている。2023年は第三者割当増資で最大80億元(約1760億円)を調達する計画を発表したが難航し、2024年5月に取り下げた。
豫園商城の売上高に占めるリゾート事業(実質的にはトマムとキロロ)のシェアはわずか1.6%だが、粗利益率は約68%と全事業で最も高い。
これらの状況から、債務問題が発生し資金調達も頓挫した豫園が、キロロとトマムという2つの非中核事業から「ホテルがすべてクラブメッド」「開業したばかりで復星国際が注力している」「スキー場の営業期間がトマムより1カ月長い」などの要素でキロロの保有を選択し、取得時より価値が大きく上がっているトマムを売却して当座の資金を確保した、という見方ができる。
トマムを売却したYCH16は何者なのか
今回、豫園商城が星野リゾートトマムを売却した合同会社YCH16の“正体”も、取引の謎の一つだ。豫園商城が星野リゾートトマムを取得したときも、その直前に日本に設立した「新雪」を介している。今回も受け皿となることを目的に設立されたと考えられる。
売り手である豫園商城が同じ北海道にあるキロロを昨年取得した背景や、YCH16に関する情報は謎に包まれている。
浦上 早苗:経済ジャーナリスト
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