1990年代「BMW」を日本に浸透させたE36を回顧する 日本にマッチした小さくて走り良い3シリーズ
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 10時30分
今40代の人に、3シリーズのイメージを植え付けたのは、1990年に登場した3代目のE36だろう。凝縮感があって、ちょっとコンパクトだった2代目(E30)に対して、3代目のボディは伸びやかな雰囲気があった。
このころ、BMW車も価格が“まっとう”になり、現実的な選択となっていたのも、人気拡大に寄与した。3シリーズは、日本のプレミアムモデルに対して「より乗って楽しく」「より質感があり」「よりブランド性が高い」と、少しずつポジションが上がっていった。
GT-Rやセルシオが生まれた中でも
欧州車に対して、日本メーカーが“反撃”を開始したのが、1980年代後半から1990年代前半にかけてのこの時代。ご存じのとおり、日本のメーカーは、ドイツの高性能車をライバルととらえて、さまざまなモデルを送り出した。
スピードでいうと「スカイラインGT-R(R32)」などは上を行ったし、静粛性と乗り心地では「セルシオ(F10)」が光っていた。それでもE36には、このクルマにしかないものがあった。
私が覚えているのは、ひとつがハンドリング。サスペンション形式が、従来のセミトレーリングアームからマルチリンクへと変わったのだ。
フロントは従来のマクファーソン・ストラットのままだったが、古いかというと決してそんなことはなく、ハンドルを切ったときに車体がじわっとロールしていく感じが、ドライブしている自分の感覚によく合い、たいへん気持ちよかった。
当時、私が聞いたのは、BMW車の乗り味は、サスペンションシステムの設計に加え、使う金属の組成によるところが大きいということ。
それで独特の“しなり方”をする。そして、それがハンドリングにおける“味”になる。可能にしているのは、BMW社の“マイスターの腕前“とのことだった。
後日、ミュンヘンのBMW本社で確認したところ「あれは私たちが立ち入れない領域のワザなんです」とエンジニアが教えてくれた。マイスターの技量と感覚が、気持ちの良い走りを作り出す。人間の感覚が、クルマの乗り味を決める重要な要素なのだ。
今は、日本のメーカーでも評価ドライバー制度とでもいうべきものを作り、大切にしている。その人たちが、加速感や減速感、ハンドルを切ったときの動き、乗り心地、音などを判断して、トヨタ車、レクサス車、日産車……と、ブランドごとの個性を作っていく。私がそういうことに初めて感心したのが、BMWだった。
マニュアルで乗る318iSやハッチバックのtiも
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