1990年代「BMW」を日本に浸透させたE36を回顧する 日本にマッチした小さくて走り良い3シリーズ
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 10時30分
もうひとつ、E36で印象的だったのは、モデルバリエーションの作りかた。4ドアセダン、2ドアセダンの後継となる2ドアクーペ、カブリオレ、ステーションワゴン(ツーリングとBMWでは呼んでいる)、それにパワフルなMモデルと、バリエーションが豊富だったのだ。
中でも、BMWのこだわりだと聞いたのは、2ドアモデル。4ドアとスタイリングイメージは近くても、ボディパーツの多くは独自設計だった。
一見するとボディのシルエットにのみ目がいくが、よく見ればボンネットは長く、トランク部分の形状も違えば、ドアもリアクォーターパネルも違う。ドイツ人などは、そこを評価する。
E36で2ドアクーペというと、「318iS」を思い出す。1992年に追加されたモデルで、特徴はDOHCヘッドを載せた1.8リッター4気筒エンジンにある。しかも、日本でもマニュアル変速機を搭載して、販売された。
軽い操作感のシフトレバーを握って、しゅんっと上の回転域まで回るエンジンのフィーリングを味わうのが楽しかったし、カーブでは軽いノーズゆえ、気持ちよく曲がってくれた。
1994年には、コンパクトとも呼ばれた「ti」というシリーズも追加された。E36クーペのテールを短く切ってハッチバック化した、独特なボディデザインのモデルだった。
リアサスペンションが先代と同じ(当時は時代遅れとされた)セミトレーリングアーム形式だったのも独特。ノーズはE36クーペと同じというのが、かなり違和感のあるデザインである。
日本では「318ti コンパクト」が販売され、300万円を切る価格からBMWのエントリーモデルとしての役目を果たしたものだ。ステーションワゴンのツーリングが、日本には正規輸入されなかったのは、少々残念だった。
今「ネオクラシック」として
なにはともあれ、このE36・3シリーズにおいて、BMWはさまざまな試みをしていたといえる。
軽快なイメージが前面に押し出されていて、そこが競合するメルセデス・ベンツの重厚さと違っていたし、アウディの生真面目な技術至上主義とも差異があり、華やかな印象があった。
3シリーズはその後、フルモデルチェンジのたびに、どんどんボディサイズが拡大していった。大きな理由は、衝突安全基準。車体の変形部分を大きくして、万が一の際の乗員保護を図るためだ。
E36で全長4210mm×全幅1698mmだったボディサイズは、最新の3シリーズ(G20)では全長4715mm×全幅1825mmにもなっている。
安全性能だけでなく走行性能においても、当然はるか上をいくのだけれど、扱いやすさの点では、E36に分があるのも事実。
車体が大型化する昨今、そのあたりもある種のノスタルジーに寄与しているのかもしれない。ネオクラシックやヤングタイマーとして、再評価される日も近いだろうか。
【写真】クラシカルな雰囲気も出てきた1990年代のデザインを見る
小川 フミオ:モータージャーナリスト
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