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東京の「出生率0.99」を騒ぐ人に欠けている視点 若者はお金がなく婚姻数の減少が加速していく

東洋経済オンライン / 2024年7月6日 8時50分

とはいえ、出生数や婚姻数が東京で多いのは、それだけ東京に若い女性が集中しているために、地方から女性が流出して、地方の婚姻減を招いているという意見もあるでしょう。

では、その人口減少分を考慮した、婚姻と出生の推移を計算してみます。
まず、未婚人口の増減を考慮した婚姻数を見ると、それでも東京のほうがもっとも多く婚姻しており、地方と差は歴然です。

一方、有配偶人口の増減を考慮した出生数でみると、東京と地方の39道府県がほぼイコールで推移していますし、それほど大きな差はありません。これは、東京も地方も結婚した女性はそれなりに多く子どもを産んでいることを示します。

以上からわかることは、東京も地方も結婚した女性の出生数は変わらず、結果として出生数が激減しているのはほぼ婚姻数の減少であるということです。

少子化対策というと、子育て支援ばかりが取りざたされますが、何度も言うように、結婚した夫婦の産む子どもの数は変われません。子育て支援などの給付金があろうとなかろうと、結婚した夫婦は子どもを産みます。言い方を変えれば、「子ども」を産んだらいくらあげます」のような出生インセンティブをどれだけ投下しても、それで出生数が純増する効果はほとんどなく、むしろ今いる子どもたちへの教育の質への選好意識が高まります。つまり、それは、皮肉にも子育てコストのインフレを起こしてしまうわけです。

すでに子のいる夫婦にとって、それがインフレを起こそうが子にかける予算を減らすことはないでしょうが、それは、これから結婚するであろう若い独身男女に「結婚や子育てはお金がかかる」という負の刷り込みを与えます。結婚や子育てはコストの高い贅沢品と化すわけです。

そして、刷り込みは、それを物ともしない大企業正社員の独身を除けば、多くの中間層の若者に「とても自分の経済力では無理だ」という諦観と消極性を呼び起こし、婚姻数の減少を招きます。

それが2015年以降の大きな婚姻数の激減と未婚人口の激増につながっています。人口増減を考慮した婚姻数も、東京以外はすでにずっと下がり続け、2020年には1995年対比3割減にまで落ち込みましたが、2005年まで唯一プラスだった東京ですら婚姻数が激減して、東京も地方と同レベルにまで低下してしまいました。

東京の婚姻減は「お金がない」ことが問題

そして、残念ながら、今後は、東京の婚姻数の減少がさらに加速していくだろうと考えます。だからといって、婚活支援やマッチングアプリの提供などに意味があるとはまったく思いません。東京の婚姻減は、地方のように「出会いがない」という話ではなく、言ってしまえば「結婚や子育てを東京でするお金がない」ことだからです。住居費ひとつとってみても、若い20代世帯主の家族が暮らしていける値段ではありません。

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