株高なのに円安の恩恵が広がらないのはなぜか 岸田政権の大きな政策ミスを教訓にできるか
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 9時0分
7月4日に日本株はTOPIX(東証株価指数)と日経平均株価がともに過去最高値を更新した。2023年末比の日本株(TOPIX)と米国株の騰落率をみると日本株(TOPIX)は22.5%、米国株(S&P500種指数)は16.1%(7月4日時点)と、日本株のリターンがやや上回っているが、双方とも好調に推移している。
株が好調でも「円安は弊害が大きい」と考える人が多い
ただ、日本株と米国株の姿は異なる部分もある。米国株式市場は、生成AIの成長期待によるNVIDIA(NVDA)株の急騰をはじめとした一部のハイテク株の上昇でリターンの多くが説明できる(伝統的な大型企業を含むNYダウ工業株30種平均株価の上昇率は同+4.3%にすぎない)。
一方、日本株は円安の追い風で、アメリカよりも幅広い企業の利益が増えており、これが株高を牽引している。中でも金利上昇の恩恵をうける業界や業界再編が期待できる業種などで、大型株の株高が目立っている。
前回のコラム「円安によって多くの日本人は再び豊かになる」(6月21日配信)などでも述べているが、今の日本経済にとって、大幅な円安は経済成長を高める効果が大きい。実際に、円安によって企業利益は大きく増え続けており、日本株市場の強い追い風になっている。こうした状況は、日本銀行が追加利上げに着手すると予想される秋口までは続くだろうと筆者は見込んでいる。
一方、円安が進む中で、日本の経済成長率が2023年後半からはっきり停滞していることを挙げて、「円安は弊害のほうが大きい」と考える人々は少なくない。確かに日本の個人消費は2023年半ばから減少が続いており、個人消費が2%前後のペースで増えているアメリカとは対照的だ。日本では、名目賃金の伸びがインフレ率ほど高まらない、つまり実質賃金の減少が続いているから個人消費が増えなかった。
だが、2024年度の春闘におけるベースアップは大企業を中心に3%台半ばを実現しており、2024年の秋口までには賃上げの影響が本格化、実質賃金は増加に転じるとみられる。さらに、6月から家計の可処分所得を増やす定額減税の規模は約3.3兆円で、これは可処分所得の約1%に相当する。実質賃金の上昇とあいまって、2024年後半から個人消費は回復に転じるだろう。
岸田政権は、2022年から2~4%台での物価高が続く中で、生活必需品の値上がりによる家計の購買力の目減りに対して、対応策も講じている。電気・ガス、ガソリン価格抑制のための、企業への補助金支給が主たる手段になった。ただ、これらで価格上昇が抑制されても、生活必需品全般の価格上昇による実質購買力の目減りを補うまでには至らないので、不十分な対応だったと言えるのではないか(8月から電気などの価格抑制策が再開するが)。
もっと早く大型減税含めた財政政策を始めるべきだった
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