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「日本流の戸建て住宅」がアメリカで売れる理由 積水ハウスと住友林業・大和ハウスで戦略に違い

東洋経済オンライン / 2024年7月7日 11時30分

大和ハウスでは2017年のスタンレー・マーチン社を最初に、3社を買収し、現在は12州で事業を展開。2023年度の戸建て住宅供給戸数は6568戸で、売上高は4721億円となっている。同社では3年後の2026年度に海外事業の売上高1兆円、うち米国事業で73%を目標としており、現状の3社体制で米国の供給戸数を1万戸超に引き上げる計画だ。今後は部材・住宅設備などの資材メーカーとの関係を強化し、グループ購買の取り組みでコスト削減を図る戦略だ。

米国市場に「シャーウッド」を投入する狙い

積水ハウスは、年1万戸弱を手掛けてきたMDC社の買収によって、米国での戸建て住宅の供給戸数は年約1万5000戸となった。2030年には年2万戸の供給体制を目指しているが、うち3000戸は「シャーウッド」を販売する計画だ。

住友林業、大和ハウス、旭化成ホームズも、米国では日本では手掛けていない「2×4工法」で戸建て住宅事業を展開してきた。2×4工法であれば資材も技能労働者も現地で容易に調達できるので参入障壁が低い。積水ハウスでも2×4工法をメーンに事業を展開していくが、日本のプレハブ技術を導入して進化させた「New 2×4工法」へと2030年までに切り替えていく。

では、米国市場に「シャーウッド」を投入する狙いは何か――。2×4工法は、日本でも1974年に「枠組壁工法」の名称で標準工法に認定され、一条工務店や三井ホームなどが採用している。壁や床などの「面」で建物の構造を支える工法で、従来の「軸組工法」と比べて高気密・高断熱を実現しやすいが、窓などの開口部を大きくしたり、間取りを大空間にしたりするのには適していない。

積水ハウスは、国内で3つの価格帯別に商品展開を行っており、米国でも高価格商品として「シャーウッド」を投入する。2×4工法では対応が難しい大開口・大空間を実現した高級住宅として需要が見込めると判断した。ただ、現地では「シャーウッド」を生産できる工場を確保できないので、当面は日本から資材を輸出して施工する。

クローズド工法の住宅がどう評価されるか

筆者が注目するのは「2×4工法」というオープン工法で形成されている米国市場で、メーカー独自のクローズド工法の住宅がどれぐらい売れるのかと言う点だ。先行する住友林業、大和ハウスなどでも挑戦したことがない取り組みだけに、積水ハウスとしても「米国戸建業界のゲームチェンジャーになる」との決意を表明したのだろう。

同社では、米国で技能労働者を育成して施工体制を整えるとともに、中古住宅市場に売却されたあとも維持管理・修繕サービスは積水ハウスが提供していく。中古市場が発達した米国で、修繕やリノベーションを行うのに制約が多いクローズド工法の住宅がどう評価されるのかは興味深いところだ。

日本ではプレハブ住宅が新設住宅着工全体の12%前後を占めているが、シェアは低下傾向にある。最近では日本のオープン工法である「軸組工法」を積水ハウス、大和ハウスでも手掛け始めており、むしろ工法のオープン化が進んでいる。

大手ハウスメーカーにとって戸建て住宅の主戦場は、縮小する国内市場ではなく、米国などの海外市場となりつつある。各社の戦略の違いが、3年後、6年後にどのような結果を生んでいるか。「シャーウッド」の米国投入が成功すれば、今後の海外戦略にも大きな影響を及ぼすだけに注目だ。

千葉 利宏:ジャーナリスト

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