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宝島社「身売り説」新潮社「危機説」迎える正念場 附録ブームが一服も、大量配本止められず

東洋経済オンライン / 2024年7月8日 8時0分

有名出版社の宝島社と新潮社だが、いずれも厳しい状況に置かれている(写真:編集部撮影)

世界的ブームが続く日本のアニメ・エンタメ。3兆円経済圏の頂点に君臨するのが、漫画原作を供給し、IP(知的財産)の創出源となる大手総合出版社だ。

『週刊東洋経済』7月13日号の特集は「集英社、講談社、小学館の野望」。彼らは今、何を考えているのか。非上場会社ゆえに謎の多いそのビジネスの奥の院を解剖する。

バッグなどの雑貨に薄い冊子のついた「付録付きムック本」でヒットを飛ばし、出版不況の中でも勝ち組だった宝島社。だが近年は減収が続き、2023年8月期の売上高は約221億円と、前期比で3割近く落ち込んだ。営業損益も、2022年度に21億円、2023年度は19億円と2期連続での赤字に沈む。

会社としての正念場を迎える中、昨年12月には創業者の蓮見清一氏が急逝した(享年80歳)。地方自治体のコンサルティング会社から出版事業に参入し、一代で今の宝島社を築き上げたカリスマ社長だ。その死去により、「身売り説」も浮上している。

付録ブームの沈静化

業績不振の要因は、牽引役だったムック本の低迷だ。著名ブランドや版権キャラクターのグッズが平均3000円台で手に入るとあって、一時はブームとなったムック本。付録は中国の工場で委託製造され、採算は高い。書店のみならず、コンビニ向けの販路を開拓したことで2018〜2019年にピークを迎えた。

往時を知る複数の関係者は、「ヒットを出した編集者のボーナスは1000万円台に乗っていた」「節税のためか、社員で欧州旅行に行ったり、豪華客船に乗りに行ったりした」と語る。

が、宴も長くは続かなかった。コロナ禍を経て、飛ぶように売れたリュックやショルダーバッグなどのファッション雑貨が振るわなくなったのだ。

問題は、売れ行きに変化があったにもかかわらず、初刷部数を積み増し、大量に店頭に配本するやり方を続けたこと。編集者には「ガイドライン」という売り上げノルマが課されていた。達成の見込みがなければ上司から厳しく詰問されることもあり、「企画の本数を増やしたり、実需以上の部数を刷っていた」(関係者)。

取次に出荷すれば、宝島社にキャッシュは入ってくる。ただ店頭で在庫が捌けなければ、出版業界特有の「再販制度」により大量に出版社へ返本されてくる。

倉庫に積み上がった在庫は、海外や直販サイト「宝島チャンネル」での販売を試みた。それでも捌けない場合は最終的に裁断処分することになるが、ここに意外な盲点があった。

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