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テレビ朝日「物言う市民株主」が異例の株主提案 前法政大総長や元文科次官が報道の自由求め 

東洋経済オンライン / 2024年7月8日 15時0分

この議案についてテレビ朝日は株主総会に先立だって「ご指摘のような事実は一切ございません」とする回答書を株主に公表したうえで「第三者委員会を設けることは業務を著しく阻害する」と提案への反対を表明した。

実際の株主総会で篠塚浩社長は、次のように答弁した。

「報道機関ですので、政権あるいは与野党を問わず政党、省庁、警察、検察、地方自治体などは大変重要な取材先です。報道局のスタッフは取材活動の一環として、日頃から政治家、官僚を含む多くの方々と面会だったり電話だったりやりとりをさせていいただいている。取材対象とのやりとりなので詳細は申し上げられませんが、一般論として、先方が当社のことに関して感想を述べることはありうると思います。ただ、あくまで取材活動中のやり取りでございますので、それが我々のその後の報道とか、コメンテーターの降板とかに影響を与えるってことは一切ございません」

議長の早川会長も口を開いた。

「官邸からですね、あるいは政権から私どもの責任者のところに何らの圧力も介入もございません。ただ、1点だけ申し上げれば、現場間でメールとかなんかのやり取りはあったかもしれません。しかし、それは圧力とか介入だと我々が受け止めるような情報は当時は上がってきておりません。従いまして、それによってコメンテーターの人事や制作責任者の人事を行ったというのはまったくありません」

一方で、古賀氏の『日本中枢の狂謀』を出版した講談社に抗議を出したのかという質問には篠塚氏が「古賀氏の個人的な見解ですので、抗議文等は出しておりません」と回答した。

古賀氏が告発した内容は、単なる「個人的な見解」で済ませおいていいのだろうか。2015年1月23日に古賀氏が「I am not ABE」と発言した後、テレビ朝日内で誰が、どのような反応をしたのか。古賀氏がコメンテーターを降りる背景でどのような動きがあったのか。これらを知ることは、政権とメディアのかかわりを考えるうえで重要な意味を持つ。不断の検証が必要だろう。

市民ネットによる4つの株主提案はいずれも否決されたが、総会後の記者会見で前川氏は手応えを口にした(7月4日に公表された資料では、株主提案の賛成率はいずれも1%台だった)。

「今回の株主提案は資本主義と市民主義の結合。大きな一歩です。視聴者を代表するグループが株主総会に出てきたことを、会社側は無視することはできないでしょう。もちろん来年も、内容を詰めて提案します」
 
テレ朝の株式は系列の朝日新聞社が24.72%、東映が17.51%を保有している。いわゆる持ち合いだ。だが、株の持ち合いは海外の投資家から批判を受けており、日本でも解消が進んでいる。朝日新聞社とテレビ朝日も安穏としてはいられないだろう。

安倍政権によるコーポレートガバナンス改革で、日本企業の経営者は株主の声を無視できなくなった。それゆえに安倍政権への資本市場の評価は高かった。しかし結果的に、今回、メディア企業の経営者は、思わぬ形で安倍政権との関わりを問う株主の声に対峙させられたといえよう。

山岡 淳一郎:ノンフィクション作家

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