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全世界化した資本主義が向かう「3つのシナリオ」 現代の「知性」は資本主義の暴走を止められるか

東洋経済オンライン / 2024年7月9日 10時30分

ここで経済の歴史について改めて確認することはしませんが、1929年の世界恐慌を契機に、経済は自律的に回復するという新古典派の経済理論は後退し、自由放任主義ではなく国家による介入・規制を重視するケインズ経済学が誕生します。

これに対して、1960年代に入ると、ケインズ的な経済政策は「大きな政府」を生み出し、財政破綻を招くという批判が噴出し、政府の規制や介入は極力排除し、市場原理を優先すべきであるとする新自由主義が登場しました。

これを実際の経済政策に反映させたのが、1980年代のアメリカのレーガノミクスやイギリスのサッチャリズムで、それ以降、世界経済の自由化と市場化が一気に進むことになります。

しかしながら、2008年のリーマンショックとそれに続く経済危機によって、世界は再び激震に襲われます。その中で浮かび上がってきたのが、資本主義がもたらす地球や社会の持続可能性の危機という問題です。地球環境を破壊し、経済格差を広げ、社会を不安定化していく今の資本主義の仕組みをどのように是正し、持続可能なものにしていくかは、世界が抱える大きな課題となっています。

こうした現状に対して、2015年、国連はグローバルな課題に取り組むためのSDGs(持続可能な開発目標)という17の目標を掲げ、2030年までに世界が抱えるすべての課題を解決するべく動き始めました。

国連の動きに先立つ形で、「人間の幸福」という視点から社会変革を進めようとしたのが宇沢弘文です。数理経済学で優れた業績を残して、「日本人でノーベル経済学賞に最も近い」と言われた宇沢ですが、シカゴ大学で同僚だった新自由主義のミルトン・フリードマンと激しく対立し、アメリカを去ることになりました。

同時に、マルクス主義や社会主義についても、計画経済が社会を不安定化し環境破壊につながること、そしてソ連の覇権主義や官僚体制が人間性を否定するものであることを厳しく批判しました。

「社会的共通資本」を構想

このように、宇沢は資本主義と社会主義の現実を比較し、資本主義という仕組みをスタートラインに据えたうえで、市場万能主義を排し、市場取引の対象にすべきでも国の管理下に置くべきでもない「社会的共通資本」というものを構想しました。

それは、「1つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」です。

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