全世界化した資本主義が向かう「3つのシナリオ」 現代の「知性」は資本主義の暴走を止められるか
東洋経済オンライン / 2024年7月9日 10時30分
22-24世紀の未来を描いたSFドラマの『スタートレック』では、惑星連邦にはもはや通貨というものが存在せず、無尽蔵な反物質エネルギーのおかげで、すべての連邦市民は働かなくても最低限の生活が営める世界が実現していますが、そのようなイメージかもしれません。
日本では、社会学者の宮台真司が、近年、『崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する』など多くの場で、加速度的に社会が駄目になれば人々は真の意味で連帯するようになると訴えていますが、これもある意味で加速主義のひとつと言えます。宮台は資本主義自体の終焉を想定している訳ではありませんが、じわじわと劣化し続け、閉塞感に満ちた今の日本社会を建て直すためには、消去法的に資本主義を加速するしかないというのです。
拡大し続ける「人間の欲望」
現代の資本主義が進む方向性は、おおむねこの3つのシナリオのいずれかに収斂していくものと考えられます。
私も含めて、経済人の多くは穏当な修正資本主義の立場を取っています。むき出しの資本主義というのはブレーキのないスポーツカーのようなもので、高性能なのは認めるにしても、そのままでは怖くて運転できないというのが、多くの人が今の資本主義に対して抱いているイメージなのではないでしょうか。
NHKの番組に「欲望の資本主義」という人気シリーズがあります。「やめられない、止まらない、欲望が欲望を生む世界。わたしたちはいつからこんな社会を生きているんだろう」というナレーションが印象的ですが、ここ100年で世界人口は20億人から80億人へと4倍に増えています。これが2060年頃には100億人にまで到達すると言われている訳ですから、人間の欲望をガソリンにする資本主義にとっては十分すぎるほどの燃料です。
SF映画『マトリックス』では、人間は生まれてすぐに機械が作った人工子宮に閉じ込められ、AIを動かすためのエネルギー源として利用されます。人間の欲望をエネルギーとして駆動している資本主義と人間の生体エネルギーで動いているマトリックスの世界は、驚くほど似ています。
私たちがこうした問題を意識するかしないかにかかわらず、資本主義に立脚した世界システムは着々と領域を広げつつあります。その完成はもはや時間の問題であり、資本主義が世界を完全に覆い尽くす直前まで来ているというのが、私の現状認識です。やはりアメリカという世界のスーパーパワーが、自由至上主義のリバタリアン的な思想に立脚した国であるというのが大きいと思います。
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