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「カフェふくろう」がお手本、認知症の人の働き方 「社会参加型の介護施設」目指す新たな取り組み

東洋経済オンライン / 2024年7月10日 14時0分

認知症の人に対する社会の偏見や当事者の苦しみが、その言葉に込められていることを、深く感じ取った。

番組の取材で、「DAYS BLG!(特定非営利活動法人町田市つながりの開・代表前田隆行)」を知った。

前田さんは、日本で初めて認知症の利用者が仕事をし、対価として謝礼を得る社会参加型デイサービスのモデルを構築した。「社会の一員として働きたい」という声を実現させるため、厚生労働省に何度も出向いて、要介護者が働く意義を訴え実現させた(*2)。

現在は全国18カ所のデイサービス、デイサービスとショートステイ、訪問介護を柔軟に組み合わせられる小規模多機能型居宅介護、特別養護老人ホームなどで展開している。

イチゴ農家で作業を手伝う

その1つ、岡山県のBLGきのこ(社会福祉法人新生寿会・西部いこいの里 認知症対応型通所介護事業所)は、地域の農家、小中学校や保育園から依頼を受けて、有償無償の活動をしている。

特に、毎年3月~夏は、イチゴ農家の施肥(せひ)作業(作物に肥料を与える)として、植木ポットに土を入れる(*3)。

5人のメンバーが、多いときで約360個を詰める。

委託先の農家からは「孤独な作業だが、みなさんと世間話をしながら作業でき、精神的に支えられている」と言われたそうだ。農家からは、月ぎめで謝礼を得ている。メンバーはそれで、家族にささやかな贈り物をしているそうだ。

BLGきのこの田中美鈴施設長(61歳)は、「メンバー同士が作業のコツを教えあうなど、お互いに支えあっています。これまで私たちスタッフは、介護が必要な人の過去の人生に注目しながらサポートしてきましたが、それだけでなく、『いまできること』を引き出したり見つけ出したりすることの大切さを感じています」と話す。

長野県のBLG諏訪(株式会社一夢希〈いぶき〉・小規模多機能型居宅介護)では、近所の美容室から「パーマ紙(パーマをかけるとき、ロッドに巻く紙)」を再利用するための、シワを伸ばしたり広げたりする作業をボランティアで受けている。座ったままできるため、要介護4のメンバーも積極的に作業する。

障害者施設からは、昼食のみそ汁の具の野菜をカットする作業を受注している。多いときは約20人分の玉ねぎやじゃがいも、にんじんなどを包丁で切る。こちらは謝礼を得ている。

おいしいビールを飲むぞ

このほか、地域の酒造会社の協力で、福祉大学の学生や保育園の子どもたちとともに、ビールの原料となるホップを栽培する。ビールが商品化できたら、酒造会社が販売代金の一部を寄付できるかもしれないとのこと、メンバーは「おいしいビールを飲むぞ」と張り切っている。

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