1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

フランス総選挙で予想外、極右政党「急失速」のなぜ それでも「マクロンは終わった」と指摘される理由

東洋経済オンライン / 2024年7月10日 7時30分

実際、移民・治安問題や格差の問題、購買力低下の問題をマクロン政権は解決できていない。RNは移民の二重国籍廃止や移民家族呼び寄せ制限、刑務所収容人数が不足しているために、犯罪者を収監しないか、早く釈放することで再犯率が高まっている問題には、刑務所を全国80カ所以上に増設する政策などを訴え、支持を集めてきた。

政権政党への脱皮に取り組んできたRNは、今では確実に政治基盤を築き、ルペン氏は「わが党を極右と呼ばないでほしい」とメディアに要請している。

マクロン氏の足元の状況は混沌

一方、マクロン氏の足元の状況は混沌としている。今回最も議席を獲得した左派連合のNFPは、日ごろは互いに距離を置く20を超える左翼政治運動集団の寄り合い所帯で、選挙が終われば共通政策を打ち出すのは難しいとされている。

選挙の結果を受けて、アタル現首相は辞表を提出したが、現時点ではマクロン氏は受理を拒んでいる。仮に別のお気に入りの人物を首相に指名しても、議会が拒絶するのは明らかだからだ。政府が決まらず、ハング・パーラメント(宙吊り議会)の状態がバカンス明けの秋まで続く可能性は高い。7月26日からパリ五輪も始まるため、現閣僚維持で夏を乗り切ることをマクロン氏が選ぶ可能性は高いと複数のメディアが予想している。

そもそもマクロン氏の支持率低下の背景には、金融界のエリート出身で民主的話し合いを軽視したことがある。防衛や社会保障の重要法案について、議会審議を省略できる憲法49条3項を多発しており、強権独断政権にもはや有権者がついていっていない。

大した政策も打ち出せないマクロン政権が続けば、フランスは弱体化する。「マクロンは終わった」と指摘するメディアも出てきている。思想信条がまったく相容れない政党と無理な共闘をしたツケは大きいとみられる。

イギリスでは14年ぶりの政権交代

欧州では、イギリスの総選挙が7月4日に行われ、中道左派の労働党が大勝。14年ぶりの政権交代となった。スターマー新首相と労働党支持者たちは勝利に酔いしれているようだが、「かつての福祉優先の政策は打ち出せないのでは?」という疑問がある。

というのも、政治が経済優先になった現代、保守も労働党も選択肢は多くはないからだ。「小さな政府」を追求するはずの保守党政権下で、国民の租税負担率(対GDP比)は1940年代以降で最高となっている。

また、労働党だから左傾化とはいえない現実がある。スターマー氏は1997年に18年続いた保守党政権から政権奪取して首相となった労働党のトニー・ブレア氏ほど、圧倒的人気を得た期待の星とは見られていない。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください