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「なんでも数値化」がもたらすばかげた競争意識 あらゆるものが測定され比較されるという悪夢

東洋経済オンライン / 2024年7月11日 13時40分

ありとあらゆるものがゲームの世界のようにポイント化され、容赦なく比較される世界では、競争心が煽られます(写真:もとくん/PIXTA)

営業成績やボーナスの額、テストの点数、年齢や体重、レーティングや「いいね」の数など、私たちはなんでも計測し、数値化する世界に生きている。
しかし、私たちの脳は数字に無意識に反応してしまうため、数字はあなたを支配し、楽しい活動や経験をつまらないものにし、他人との比較地獄に陥れ、利己的で不幸な人間にしてしまうという。今回、過剰な数値化がもたらしているさまざまな問題を明らかにし、その解決策を示した『数字まみれ:「なんでも数値化」がもたらす残念な人生』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

数字やポイントが競争意識を煽る

「私がゲームデザイナーとして利用する道具箱の中で最も大切にしているのは、ポイントシステムです。それはゲームを遊ぶ人に、何を大切にすればよいかを伝えるからです」。

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これは「ロード・オブ・ザ・リング」、「ケルト」、「ロストシティ」などのゲームを制作した世界屈指のボードゲームデザイナー、ライナー・クニツィアの言葉だ。

ゲームのポイントステムは人々の物の見方をすっかり変えてしまうらしく、遊ぶ人は現実を逃避してやる気を出し、心の狭い負けず嫌いと化すから、ときにはイライラしてテーブルをひっくり返したり、互いに怒鳴りあったりする。

実生活では何の価値もない想像上の数字とポイントのせいで、普段は冷静で控えめな人が、急に敵意を見せたりすることもある。

ゲームを研究している哲学者C・ティ・グエンによれば、ゲーム世界におけるポイントシステムの論理が、今では広く社会全体で熱心に導入され、適用されているという。

私たちは学校の勉強から税務申告、販売コンテスト、ボーナスプログラム、さらにツイッター(現X)の会話まで、あらゆるものを「ゲーム化」している。そしてグエンが言うように、「私たちがゲームで遊んでいるのではない。ゲームが私たちで遊んでいるのだ」。

数字とポイントシステムは、物理現象と社会現象を測定可能な単位に変えてしまう。

私たちの金銭的責任はクレジットスコアに、社会的ネットワークはフォロワー数とソーシャルメディアの閲覧数に、旅行熱はマイレージサービスのマイル数に、エクササイズの楽しみはカロリー消費量と1キロメートル当たりの平均歩行速度に、それぞれ換算される。

そして、数字は競争意識とライバル心を煽る。私たちは暮らしのすべてを数値化することによって、次から次へとたくさんの領域に競争を持ち込んでいるのだ。

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