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「なんでも数値化」がもたらすばかげた競争意識 あらゆるものが測定され比較されるという悪夢

東洋経済オンライン / 2024年7月11日 13時40分

以前は多様なやり方で説明できた人と経験の質的相違が、今では盤石の量的相違に姿を変えた。2枚の自撮り写真、2人のビーチでの水着姿、あるいは2つのディナーが、急に競い合う間柄になり、容赦なく比較される。

数量化はランク付けを容易にする

ビジネスの世界でも同じで、ショッピングの経験は3個の星に、トイレの利用はスマイルマークに、本やコンサートは1から6までの評価に要約される。数字と数量化は複雑な現象を1次元の段階に作り替え、測定に伴って内容の大半が失われてしまうのだ。

その結果、数字は言語および経験の価値にも影響を及ぼすことになる。「彼女の美しさは1から10までのどの段階ですか?」のように、質、物、人に数字という結果を結びつけることで、私たちは価値に明確な評価を与える。

8は7よりすぐれている。数量化することで、価値の関係性が単純になり、物の比較も単純になり、私たちはすべてにおいてはっきりランク付けされる。

ミカエルにはインスタグラムのフォロワーが2万8400人いる。ヘルゲは135人だ。数量化は社会的地位を明確にし、社会現象を交換可能な通貨に変えるのも容易になる。そしてお金に関しては、たいてい大きい数字のほうが歓迎される――脈拍と血圧の逆だ。

アルゴリズムがビッグデータを要約して、その結果を人々に提示する。みんなクリックして比較したい気持ちを抑えられないからだ。

自分は334、ニルスは176、近所の人は189、パートナーは544。数字は――社会的知性から魅力、ソーシャルメディア上のランキング、肥満度、抑うつ傾向まで――あらゆるものに当てはまる。

数字を結びつける新しい方法が生まれるにつれて、新しいサービスが作られ、そこでは通貨としての数字の役割がより明確になってくる――よりばかげたものになると言う人もいるだろう。

相性や信頼度も計算できる?

たとえば、2006年に開始されたCreditScoreDating.comというサービスでは、クレジットスコアの相性に基づいて将来の伴侶を見つけることができる。

そのウェブサイトによれば、全男性の57%、全女性の75%が、デート相手を選ぶ際に経済的な安定性に重きを置くので、完璧なパートナーを見つけるためにそれ以上の方法は考えられないというわけだ。類は友を呼ぶとか呼ばないとか……。

ところで、フェイスブックが2015年に、ユーザーのソーシャルネットワークに基づいてそれぞれの信用度を計算する手法の特許をとったことをご存じだろうか。

この手法の土台となるロジックは次のようなものだ――友達の中に支払いを渋る人や支払い能力の低い人が隠れている場合、その人自身の信用格付けも低い可能性が大きい。

だから付き合う相手には、直接に接する場合も、デジタル上で接する場合も、よく気をつけなければいけない。さもなければ、数字に苦しめられることになるだろう。

(翻訳:西田美緒子)

ミカエル・ダレーン:ストックホルム商科大学教授

ヘルゲ・トルビョルンセン:ノルウェー経済高等学院(NHH)教授

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