トルクメニスタン「地獄の門」軽自動車で訪ね挫折 地獄を見るなら夜、と「道なき道」を行くも闇
東洋経済オンライン / 2024年7月11日 17時30分
「もしかして、あれかも」
Yukoが指さしたのは、ひと筋のタイヤ痕だ。
ヘッドライトで照らすと、土漠の奥へ延びている。
地図アプリによると、その先は点ひとつ記載されていない空白地帯だった。さっき探していた点線とは離れているから、残念ながら別物みたいだ。
うーむ、悩む。
とりあえず、落ち着いて考えよう。
まず、これは轍である。かなり薄く頼りない。どう見ても道ではない。あえて言うなら、誰かがう○こをするためにひと目につかないところを探したって感じだ。
しかしだ、方角的には地獄の門に向かっているようでもある。
点線ルートより近道になるから、けっこうイケるような気がする。 でもだ、よーく考えてみよう。
近道なのに道じゃないとしたら、道にならないってことではないだろうか? 実は、途中で崖になっているとか。
地溝帯が横たわっているとか、それこそ穴が空いているとか。これは罠かもしれない!
と気づいた鋭いボクだが、Yukoを見たら少しも気にしている様子はなかった。ぐずぐずしてないで、さっさと行けよって顔をしている。
あ、そうですかとハンドルを握り直し、粛々とタイヤ痕をたどることにした。突然穴があっても落ちないように、そろりそろりと抜き足差し足忍び足の低速運転で。
道が徐々に砂漠になっていく
一筋の轍は進むほどに枝分かれし、本数が増えてきた。一本一本が色濃くくっきりとしてきた。しかし、喜んでいる場合ではないのである。簡単に地獄へ行けるほど、世の中は甘くはない。土漠が徐々に砂漠になっているだけ。砂が柔らかくなったぶん轍が深くなったのだ。
だからほら、タイヤがよく滑るようになってきた。ずるるるーっと。まずくね?
こんなところで砂に埋まったら、幹線道路から離れているから、誰も発見してくれないよね? もし砂嵐がきたら、轍が消えて遭難だ。もれなく涅槃ゆきだ。
すでに地獄の一丁目まで来たようで、ボクらの命は風前の灯になってきた感があった。よく考えよう、命をかけてまで頑張ることはないだろう。地獄はいつでも逝ける。引き返すことにした。
幹線道路が見える娑婆まで戻って、その夜は、車のなかで安らかに眠ったのである。すでに300キロも走ったから、仕事はなんとかなりそうだということにして。
茶屋のオヤジのJeepで突破
翌朝、目が覚めたら腹が減っていた。
地獄へ行くのに何も急ぐことはなかろうと、茶屋まで戻り、腹ごしらえをすることにした。
茶屋のオヤジに、
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