VWが「初代ゴルフGTI」を今も大切にし続ける訳 ゴルフ50周年イベントで滲ませたストーリー
東洋経済オンライン / 2024年7月11日 10時0分
ところが1977年単年をとっても、西ドイツ(当時)だけで2万2000台のGTIが売れた。グローバルでは、なんと約46万2000台。そんなことから、“カルトカー”との異名で呼ばれたほど。
日本にいる私たちも、「どんなクルマなんだろう」と、たいへん大きな興味を持った。しかし、当時の正規代理店はGTIの輸入はせず、日本でゴルフⅠ(初代)といえば、質感が高く、どこか知的で、かつ高いクルマ、というイメージにとどまった。
私はそのあと、幸運にも何回かゴルフIのGTIをドライブする機会にめぐまれた。そして今回のオスナブリュックでも、うれしい驚きが待っていた。ミュージアムで保存されていたオリジナルのGTIを好きに乗っていい、と言われたのだった。
ジュジャーロの「先見の明」
「ホントによく出来たデザインのクルマだ」と、実車のまわりをぐるりと回りながら、私は思った。全長3725mm×全幅1630mmというコンパクトなサイズの車体は、強い凝縮感を持っている。そう改めて感じた。
デザインを担当したイタルデザイン(当時)のボス、ジョルジェット・ジュジャーロ(ジウジアーロ)は、のちのインタビューで次のように語っている。
「私はこのパッケージとスタイルでの成功に自信を持っていたが、フォルクスワーゲンのマーケティング担当などマネージメント層は当初、なかなかそれを理解してくれず、市場で大きく評価されたことが、むしろ驚きだったようですね」
現在は、衝突要件や燃費効率、操縦安定性のための空力要件などにより、同じデザイン、あるいは同じディメンションのモデルを作るのは難しいから、オリジナル・ゴルフばかり褒めては、現代のデザイナーがかわいそうだ。しかし、オリジナル・ゴルフを見て、“やっぱりいいな”と思った。
今回、私が乗ったGTIは、1983年の後期型。ブラックの外板色で、GTIの特徴であるグリルの赤いラインがよく目立っていた。最初に出たときのボディカラーは「マーズレッド」と「ダイヤモンドシルバーメタリック」の2色だったが、私にとって印象深いGTIは、このブラックだ。
GTIは、車高が標準モデルより20mm落とされていて、タイヤサイズは175/70R13。当然、フォルクスワーゲン・クラシックが管理しているGTIも、オリジナルサイズのタイヤを履いていたが、私の頭の中にあったタイヤサイズより太かった。
エンジンは、前期型が1.6リッターで、後期型は1.8リッターになっている。今回のモデルは、もちろん後者。運転席に収まると、車内にはどこか高級感を感じた。
今もって気持ちのいい、その走り
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