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公立高校の校長「現場と自治体の間」で揺れる苦悩 人手不足の中、問題行為起こした先生の対応も

東洋経済オンライン / 2024年7月11日 8時30分

ただ、講演で外部の人にお願いするためには、ある程度の先立つ物も必要になっていくので、金銭面ではわれわれ管理職の旅費を削ったり、人脈の部分では私が参加した同窓会で知人にお願いするなど、地道に活動していこうと思います」

中堅校の実情が反映されない評価基準

外部の人材を活用することに希望を感じる一方で、先述したように学校の評価、先生方の評価には膨大な作業が必要となります。それでも通っている生徒たちのために問題解決の努力を続ける細川先生ですが、自治体から指示される評価の基準には、中堅校の実情を反映できていないと感じています。

「自治体では進学先や中途退学者など同様の基準で各学校を評価していますが、同じ基準でそれぞれの高校を評価するのは違うのではないかとも思っています。

中途退学者率は、学校が悪いというよりは、その子の状況や学校とのミスマッチなども考慮しないといけないはずです。大学群に関しても高校によって生徒数などのボリュームゾーンが異なるため、評価軸がすべての学校で一緒というのはやはり違うのではないかと。

私立の学校だと特色を打ち出していけるのですが、公立だと難しいですよね。自治体が各学校の位置づけを明確に示してくれたらいいのと感じています」

そうした学校の位置づけは、「市町村」単位でも問題があると細川先生は考えます。細川先生の学校の地区は出生率の低下もあり、大幅に中学生が減少しました。しかし「同じ地区の公立高校の数に変化はありません。生徒が減るのに、学校の数は変わらないから地域で学生の奪い合いになってしまっています。募集が減った学校は『学校経営がうまくいってない』と言われるのです。本当に必要なのは生徒と学校の適切なマッチングだと思うのですが」と細川先生は吐露します。

生徒の親は誰とも話ができていない

こうした募集の変化、入学生徒数の変化には、社会全体の変化の影響もあるようでした。

「我が校で保護者対応をしていると『意思の疎通が難しい親御さん』も増えてきたと感じています。親御さんの苦情や相談を聞く機会も10年前より増えたのですが、話を聞いていると、親御さん自身が、誰ともお話できていないのではないかと。

世間で学校改革が進む中で、『効率化』の名のもとに、それまでやっていたクラス懇談会や保護者会をしなくなって、親御さん同士でつながらなくなったことが大きいかもしれません。何かトラブルがあって、クレームを入れた親御さんも、どういうことがあったのかを丁寧に聞いてみると、感情がおさまることも多いです。ストレスを発散する方法が、なくなってしまったためなのかなと思います」

教員不足、学生不足に加え、コミュニケーションの不足という問題も見られるようになった昨今の高等学校。情報が増え、便利になった現代において、議題に挙がりにくい「中堅校」の細川先生の切実な訴えからは、浮き彫りにされにくい問題が潜む中堅高校の「教育困難」な実情を垣間見ることができました。

濱井 正吾:教育系ライター

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