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草笛光子「美しすぎる90歳」勇気をもらえるその姿 主演映画がシニアのみならず50代にも刺さりまくり

東洋経済オンライン / 2024年7月11日 15時0分

吉川は無自覚なセクハラ、パワハラをくり返し、部下に煙たがられて異動になってしまう。いわば、典型的な“昔の価値観”を背負った役回りである。

家庭より仕事。“24時間働けますか”的なモーレツビジネスマンだった彼は、これまで推奨されてきた働き方が、全否定される“社会人迷子”状態だ。挙句の果てには、家族にも嫌われていたことが発覚するのだ。

彼の

「人生100年っていうじゃないですか。もしあと50年もあるとしたら、途方に暮れます」

というセリフは、身につまされる。

生きてきた経験が活かせないのだから「もう動けない」。しかしリタイアまでのカウントダウンは長くなる一方。確かに、途方に暮れる。

映画で、佐藤愛子が吉川にかける、

「いい爺さんなんてつまんないわよ。面白~い爺さんになりなさいよ」

という言葉は、動けなくなった人たちにとって、最高のエールではないだろうか。

コロナ禍を境に、急激に変わった価値観。デジタルについていけず、時代に置いてきぼりになった高齢者と社会に置いてきぼりにされてしまった50代。その2人が、アップデート(今の若者に合わせる)ばかりではなく、時代遅れを活用する。

吉川は何度断られても、差し入れとともに突撃してくる。足で仕事を取りにいき、佐藤愛子は万年筆と原稿用紙でエッセイを書くのだ。そして吉川は、そのやりとりの中で、家族に対しての関わり方を反省していくに至るのである。

生きにくい2人が昔ながらのガチンコ対面方法で、ヒットを生んでいく。人生を復活させる。映画パンフレットに、脚本家の大島里美のコメント「時代遅れの二人の逆襲」と大きなフォントで書かれていたが、まさに。

自分のやり方で青春を取り戻すそのプロセスは、本当に勇気をもらえる。

佐藤愛子の「愚痴」が痛快な理由

映画の原作は、佐藤愛子のエッセイ集『九十歳。何がめでたい』とその続編『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』である。1冊目が2016年に小学館より単行本が発売されて以来売れ続け、今やシリーズ累計発行部数が180万部を突破している。

もう前向きもヘッタクレもあるかいな。チッ、面倒くさい。毎日が天中殺。愚痴のキレがよくて、クスクスとページをめくる手が止まらない。失敗談や時代の変化に困惑する佐藤愛子の愚痴は、自分の母と重なり、日々軽くあしらっている自分に、罪悪感が顔を出したりもする。

ただ、佐藤本人は「特に新しいことを考えて書いたわけでも、何か特別な思いを込めたものでもなく、相も変わらず憎まれ口を叩くという、そんな気分でしたかね」と語っている。

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