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草笛光子「美しすぎる90歳」勇気をもらえるその姿 主演映画がシニアのみならず50代にも刺さりまくり

東洋経済オンライン / 2024年7月11日 15時0分

憎まれ口でもスカッとするのは、明るい本音だからである。逆を言えば、SNS時代はすっかり、何をするにも、何を言うにも、責任の所在を考え、グルグルと「そこそこ好感度を保てる着地点をさがす」クセがついていたと痛感する。

言っても差し支えのない程度の本音すら、心の奥に置き去りにしてしまっていて、それを佐藤愛子が代弁してくれているように思えるのかもしれない。

養老孟司氏は、「90万部『九十歳。何がめでたい』が売れる時代に危惧」(『女性セブン』2017年7月20日号)という記事で、「叩かれそうで怖いから本音を言わない」という現代の風潮とこの本の大ヒットをからめ、

「『佐藤さんだから言える』と言って、他人に言うのを任せてはいけません。みながそう思っているから、世の中がこうなってしまう」

と語っている。

確かに、このボヤキ力、読んで笑うだけでなく、倣ってどんどん実践していくべきかもしれない。

今、それができている最たる人は誰かと想像すると、俳優の大泉洋が思い浮かぶ。確かに彼の話も聞いていてスカッとし、そのトーク力も人気の要因である。本音なき時代にならぬよう、明るく愚痴る技術、磨いておきたい。

「次はどうするの?」

長生きはできる世の中だが、自分らしく生きるのはとても難しい。そんな現代、「人生100年時代」というワードは、ちょっとした呪いのように重くのしかかっている。

ただ、生きていれば、時代の追い風が突然吹いてくる。そして忘れた頃に主役の座が回ってくる――。この映画が見せるその希望は、シニアだけでなく、若者にとっても同じだ。一度燃え尽きた後も復活できる。人生は長いが、決して悪くない、大丈夫だと思わせてくれる。

ラスト、佐藤愛子を演じる草笛光子が見せる素晴らしい笑顔には、それだけの説得力とパワーがある。あの笑顔をスクリーンで観るだけでも映画館に行く価値あり、と力説したくなるほどだ。

90歳で現役、主役を演じる草笛光子は、令和という時代の主役の一人といっていい。2023年に発売されたスタイルブック『草笛光子 90歳のクローゼット』(主婦と生活社)についていたコピー「人生100年時代のヒロイン!」は、まさに言い得て妙である。これからさらに活躍の場が増えていくだろう。

90歳の今もハイヒールで踊るという体力気力、輝きを集めたようなグレイヘアも魅力。そのグレイヘアも実は、2002年の舞台「W;t ウィット」で、役柄に合わせ丸坊主にし、それ以来、白髪と黒髪がバランスよく生えてくるようになったので、黒に染めるのをやめたそうだ。

ひとつ挑戦することで、ひとつ何かを削ぎ落とし、楽になっていく――。彼女の生き方には、そんなポジティブなサイクルが定着しているようにさえ思う。

老いとは“おっくう”ということで、若さの秘訣は、なんでもチャレンジすること。そう語る草笛光子は、『九十歳。何がめでたい』のクランクアップの際、前田哲監督に、こう言ったという。

「次はどうするの?」

心はもう次回作! この前向きな言葉に、人生100年を楽しむ秘訣がギュッと詰まっている気がした。100歳で主役を演じる彼女も、ありありと想像できる。

人生、何度も青春は廻りくる。

田中 稲:ライター

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